『The book jojo`s bizarre adventure 4th another day』 乙一

「あんたになにを言われようが、生き方は変わらねえ。この髪型以上のかっこういいものを、まだ俺は、見つけられてねえからな」

一部の者にとって濃密な日々であった、1999年のあの夏から数ヶ月が経過した杜王町。雪に包まれたこの町で、広瀬康一岸辺露伴が出会った血まみれの猫がすべての始まりだった。密室の中で不可解な死をとげた女、事件の中で見え隠れする腕に爪痕のある少年。一人のスタンド使いが記す、悲劇から始まる【ストーリー】を、東方仗助とその仲間は断ち切ることができるのか? 乙一が5年に及ぶ構想と試行錯誤の末に書き上げた、渾身のジョジョ第4部ノベライズ!

対The Book。2000年を迎えた冬の杜王町で繰り広げられる、新たなるスタンド使いの物語。さすがに長い時間をかけて試行錯誤を繰り返しただけあって、ジョジョの世界を壊さず、それでいて乙一作品の雰囲気も損なわない、丁寧な作りになっています。盛り込まれた数々の小ネタはもちろん、本編では触れずじまいだった件のあの人にも言及していて嬉しかったり。基本的に、短い話の連なりである4部において、ここまで一つの事件に紙面を割くことはなかったこともあり、登場人物たちが、静かに丁寧に真相へと迫っていくさまは、徐々に徐々にボルテージを高められているようで楽しかった。

唯一気になったのは、仗助にまつわる『あの人』への言及が、隠す気が微塵もないメタ描写になっていたことかな。あの部分だけ、作者がぬっと顔を出したようで、意表を突かれた。人によっては、あの記述のせいで同人誌めいた印象を受けたかもしれない。
とは言え、4部の特徴である、吉良吉影との闘いを彷彿とさせる少しやるせないエンディングも味わい深く、全体から言えば相当楽しませてもらったと思う。ジョジョ好きなら一読の価値はある。