『鬼灰買いの佐平治 数えで十七、水の衣を織り成して千歳の綾を解きほぐす』 小仙波貴幸

鬼灰買いの佐平治 数えで十七、水の衣を織り成して千歳の綾を解きほぐす (講談社BOX)

鬼灰買いの佐平治 数えで十七、水の衣を織り成して千歳の綾を解きほぐす (講談社BOX)

……まあひらいてみるとしようか。彼岸にまでとどいてくる話だ、何かあるに違いねぇ。

妙なうわさを聞いた。「至恩のはた」を纏うひとたちが、鬼に化けるというのだ。その布はとてもとてもうつくしくて、まるで……。これは鬼灰買いの佐平治が、ひとりの人を救う物語であり。女子高生、野々村小箱が、ひとりの友を助く物語であり。悪鬼改方(あくきあらためかた)の長谷川鉄虎が、ひとりの鬼を討つ物語であるという。
鬼面の紋を背負う者、見るべからず、触れるべからず。
鬼面の紋を背負う者、見るべからず、触れるべからず。
極彩色泡沫夢幻の鬼物語、灰になるまでお愉しみあれ。

面白い。短篇のときもそれなりに読めるモノだったけど、長編になってもまったく齟齬が出ることなく、綺麗にお話が作られている。「鬼灰買い」という設定も目新しいし、まったく無名の新人が書いたことを感じさせない、秀作だったと思います。イラストや装丁も丁寧で素敵なので、そういう面だけでも買う価値あり。