『spica』 泉和良

spica (講談社BOX)

spica (講談社BOX)

はい終わり。
終われよ。
終わりのはずだろ。

髪はピンク。眉や睫毛もピンク。
宇宙からやって来たスピカ星人である彼女と、五億歳の地球人である僕は、普通に出会い、恋に落ち、キスをし、エッチをし、愛し合った。
そして、そのまま一緒に住み、泣き、笑い、喧嘩し、仲直り、倦怠期を経て、悪口を言い合って…そして別れた。
だけど、恋愛が終わることより、ずっとずっと辛くて苦しくて最低最悪なことがある。
それは、「続く」こと。
泉和良の描く、終わりから始まる狂った恋の物語。ファッキンラブ!


自分的には、エレGYよりも傑作でした。
序盤の方は、水井の行動にあきらめの悪さを感じて、ほとほと呆れてしまったのですが…中程になると、そういう単純な感情で斬り捨てられる、些末なモノじゃないことを、なんとなく感じたりして。
きっちり別れても、頭で分かっていても、こちらへ再び向くことを期待してしまう、その瞬間をひたすらに待ち続けてしまう…それほどまでも好きな人って、出会えるものなのかな…自分は、彼のような大恋愛をしたことがないので、うまく共感することは出来なかったのですが。この人じゃなきゃ駄目だ、っていうのが、あるんだろうなぁ。その人の性質にもよるかもしれないけど。
むしろ、最終的には水井より、遙香の方に共感してたかもしれません。
何しろ、自分は疑い深くて空気が読めなく、おまけに妄想力だけはたくましいのでw、ちょっとのコミュニケーションでも、色々と勘ぐってしまうことがしょっちゅうで。そんな自分に、彼女が水井と別れた理由は、異様なほどに納得できるモノでした。これで自分の性別が女だったら、まず間違いなく「この本は自分のために書かれたものだ」と決めつけて疑わなかったことでしょう。
サブキャラクタの何人かが、終盤置き去りになっていたり、心残りもなくはなかったのですが、それでもなお、この作品には五つ星を付けなければいけない、とだいぶ早い段階で決意していました。不器用で情けなくて疑い深い、そんな二人が織りなす恋愛小説。傑作でした。次回作もより一層楽しみにしています。