『東京ヴァンパイア・ファイナンス』 真籐順丈 

「うちはね、トレイチでいいよ」
「トレイチ。利子が十日で0.1割ってことね」

“狼男”は惨めったらしく吠え叫ぶ。美女をこの手に入れられないがために。
“亡者”は夜の街を徘徊する。復讐の恨み言を呟きながら。
“人造人間”は改造手術を決意する。愛する人に振り向いてもらうために。
“魔女”は薬の大鍋をかきまぜる。毒のように甘いお菓子を夢見ながら。
そして“吸血鬼”は、そんな夜の世界の住人を前に、呵々大笑していた。
万城小夜。職業・ヤミ金融。ヴァンパイア・ファイナンスなる、いわゆる090金融を営む彼女は、破格の超低金利で金を貸し出す代わりに、それぞれの込み入った事情に、お節介にも首を突っ込んでくる。彼女によって振り回された怪物達のそれぞれの夜は次第に混ざり合い、そして…。
電撃小説大賞銀賞受賞作。


世間での評価は、他の受賞作に比べてイマイチだったそうなのですが、群像劇、というところと、ダ・ヴィンチで話題だった『地図男』の作者さんということで、手に取ってみました。
結論から言うとうーん、やっぱりイマイチ…か?
中盤までは、結構面白かったです。お節介焼きな金貸し少女が、ハードなスケジュールであちこちを駆け回る姿は読んでいて爽快でしたし、振り回される人々が段々と結びついて、収束していく展開も、おお、と思わせるモノがありました。
ただ、やはり残念だったのは、やはりラストでしょうか。5章までの敵さんフルボッコエンドまでは、加速がついて勢いよく楽しめたのに、6章からの小夜に関するエピソードが、どうしても蛇足としか思えなくて…。構成からすれば、最後に狂言回しの彼女の話を持ってくるのは、なるほど筋が通ってるようにも思えるのですが…どうにも中途半端感が拭えなかったです。そういう後日展開みたいなのは、二巻以降でぽつぽつやれば良かったんじゃないかなぁ、とか。とってつけたような伏線を張ったように見えてしまいました。
途中まではほんとに面白かったので、最後にこのような感じになってしまっているのは、すげーもったいないなぁと思いました。技術を磨いた上でのリベンジに期待したいです。