『マッドドリーム・アンド・マジカルワールド』 黒野翔

パンドラ Vol.2 SIDE-B (講談社BOX)

パンドラ Vol.2 SIDE-B (講談社BOX)

なんで俺は不治の病に冒されないんだ!
なんで俺の両親は殺人鬼に殺されないんだ!
なんでこの街にゾンビの大群が押し寄せてこないんだ!
なんで世界は魔王に支配されてないんだ!


第3回流水大賞優秀賞受賞作。
隙あらば妄想の世界に生きる、ダメダメな高校生を主人公にした、痛さその他諸々のボーイ・ミーツ・ガールストーリー、ということでしたが…。
あえて言いましょう、まだぬるい!
と言うのも、自分が田中ロミオ氏の『AURA』をすでに読んでしまっているからでしょうが…。同じく、妄想、痛々しさという共通のモノをテーマにした青春モノとして、明らかにあちらのほうが、この作品の数段上だなーというのが、正直なところです。
日常を過ごしつつ、ふと気が付けば安易な妄想に支配されてる、ってのは自分の小中時代そのまんまの光景で、個人的にめちゃめちゃ共感しながら読んでいましたがw、お話の展開自体は、実に王道で少々物足りなかったり。いや、そのストレートさが、ラストの清々しさにもつながるので、一概に悪いとは言えないのですが…。
しかし、同じモノをネタにした小説にしては、取り扱い方やらなんやらも全然違ったりしていて、個人的にはそこが興味深かったです。ネタバレになってしまうので、詳しくは書きませんが、主人公とヒロインが出す、最終的な結論も全然別ベクトルなんですよね。妄想から脱却するか、妄想にそのまま生きるか。痛くっても、二人が楽しいならそれでいいじゃない。それもまた一つの道、なんですかね。
と言うわけで、先人の作品の影響で、少々厳しめの書き方をしてしまいましたが、青春モノの変化球としては及第点をクリアしていて、なかなか面白い作品だったとは思います。最初と最後の妄想垂れ流しなんか、何回読んでも「うわあああああああっ!!!!」ってなりますねw もっともっと鍛錬して、一皮剥けることを期待してます!