『Switch』 梓

パンドラ Vol.2 SIDE-A

パンドラ Vol.2 SIDE-A

じりりりりりりりり──

五十嵐 豪と大和 崇は幼稚園時代からの幼なじみ。幼い頃から特に将来の展望もなく、ただ無気力に日々を過ごす二人が、唯一夢中になっている趣味、それは他愛もない『悪戯』だった。
窓ガラスに石を投げ込むことに始まる、少々危険な悪行の数々。問いつめられれば無表情で無関係を訴え続け、危なくなれば赤の他人に己の『罪』を引っかぶせ。着実に『才能』を伸ばし続ける彼らは、まるで呼吸をするかのように、不満のはけ口としての『悪戯』を次々と実行していく。それらは、一つ一つは小さくとも、確実な『罪』であることにも気づかずに。
そして中学三年生の春のある日。二人は次のミッションとして、旧校舎に存在する『非常ベル』を押してしまうことを思いつく。そう、今までとなんら変わらない、簡単な『悪戯』。少なくとも、二人はそう思っていた。その『Switch』こそが、彼らのこれまでを精算する、最悪の『罪』になることを知らないままに──!


第二回流水大賞優秀賞を受賞した長編作品。若干15歳の方の受賞ということで、羨ましいやら憎たらしいやら、個人的な感情が渦巻いてるわけですが(?)、まぁそれはそれとして。
とりあえず読みながら思ったのは、この人も相当に文章が上手い、ということ。とは言え、この方の中で、自身の『小説的文章』が完成している訳ではないようで、ところどころにちょっと背伸びした表現が垣間見えたりして、それがなんだか微笑ましかったりしました。あぁ、俺もこんな書き方したりしたなぁ、とか妙に共感したり。なんか親近感を覚えました。
押すと人が消えてしまうスイッチを主題にした、サスペンス風味の学園ストーリーですが、特に引っかかりを感じることなく、するすると最後まで読めてしまい、この年齢でここまで書けるってのは凄いな、と真剣に驚嘆。雰囲気的には、黒乙一に近いモノがあるかも?ただ、これは完全に好みの問題なのですが、展開をもう少し三転四転させても良かったんじゃないかな、とは思いました。無難に優等生っぽくまとまってるので、するっと読めるけどするっと頭から抜けてしまいそうなんですよね…。パンチが足りない!
ただ、この時点でこれだけのモノを書けるのは、相当凄いと思います。この人の数年後がマジで楽しみすぎ。彼の次なる作品に期待を込めての四つ星。一皮二皮剥けるその日を、楽しみにしております。