『さよならのメテオ』 泉和良

パンドラ Vol.2 SIDE-A

パンドラ Vol.2 SIDE-A

三、二、一……

目が覚めると、自分の身が突如として遙か上空に投げ出されていることに気づいた『僕』。理由も分からないまま、死への恐怖も希薄なまま、『僕』の体は地上へ向けて落下を開始する。何故自分はこんなところにいるのか。どうしてこのような事態に陥っているのか。すべてに無関心のまま、なすがままに墜ちていくように思えた『僕』だが、そんな彼の元に正体もわからぬ不思議な人物達が、次々とコンタクトを仕掛けてきて…。猛スピードで落下していく『僕』は、彼らとの接触で、何を忘れ、そして思い出していくのか。


泉さんの短編小説。
こちらは彼の他の作品とは何の関係もないオリジナル作品。
自分も泉さんのゲームをわずかですがプレイしているので、なんとなくわかるのですが、なんつーか、この小説は完全に泉さんの世界だなーというのが第一印象。自分がプレイした「あおいほし2」のシナリオの雰囲気に、やはり繋がるものを感じます。そしてエレGYを読んだときはあまりピンと来なかったのですが、文章自体のレベルもかなり高いです。新人とかなんとかそういうことは気にせず、安心して読めるだけの上手さを、すでに有していると思いました。
ただ、なんとなく引っかかったのは、この作品のストーリー自体は、『エレGY』におけるコンセプトと、ほぼ同等のモノで書かれているような気がしたことでしょうか。具体的に言うと、作者である泉さん自身が、主人公の姿に深く投影されている、ということ。自分は決して私小説的な作品が嫌いなわけではないのですが、泉さんがこれからもこのようなコンセプトの作品を書き続けるのなら、それはそれで少々疑問を感じてしまいます。
自分は、泉さんの持つ、この独特の幻想的な世界観が好きになりかけています。故にそろそろ、泉さんの混じりっけなしの本気フィクションを、小説でも読んでみたいなーと言うのが正直なところ。もうすぐ刊行になる第二作『スピカ』が、願わくばそのような作品になることを、期待しています。