『人間は考えるFになる』 土屋賢二×森博嗣

人間は考えるFになる

人間は考えるFになる

土屋「思わせぶりにひっぱっておいて期待外れの結果じゃ読者の怒りをかうでしょう。」
森「かっても、読ませてしまったらこっちのものですから(笑)。」

お茶の水女子大学教授・土屋賢二と、国立N大学工学部助教授・森博嗣。文系と理系、異なるジャンルで活躍する二人の教授作家が、お互いのこもごもを語り合うことになった。
研究者という職業のこと、おかしなおかしな大学のシステム、自分にしかわからない趣味の話、そして売れるミステリーの書き方。
同じ立場、そして異なる分野を歩む二人が、洒脱な会話を繰り広げる。これぞ絶妙『文理』対談。


けっこう前に読んでいたんですが、小説じゃないしなーと思って感想かいてませんでした。でもまぁ、すでに漫画とかも書いちゃってるし、いいか別に。
と言うわけで、『人間は考えるFになる』です。
お笑い系哲学エッセイを多数発表している土屋賢二さんと、ミステリ作家の森博嗣さんが、文系と理系、それぞれの立場からいろんなことを語った対談集。
……と銘打ってはいますが、読み終わった自分に言わせれば、真のタイトルは森博嗣の悩み相談室〜相談者・土屋賢二〜』だと思う(笑)。「作品が売れない」とか「自分の周りにいる女子は性格が悪いひとばっかり」とか、土屋さんのそんな悩みを、森さんが理系的な考え方で諭してあげるのが全体の流れになっているように感じました。興味深い話もぽろぽろ出てくるのですが、それを語っているのは7割がた森さん、みたいな。自分は土屋さんの作品を読んだことがないので、彼の思想にもかなり興味があったのですが、掘り起こされるのは森さんばっかりで、その辺が残念といえば残念でした。
それと、巻末には、土屋さん、森さん両名が書き下ろした短篇小説が掲載されています。
土屋さんの『消えたボールペンの謎』は、彼が初めて挑戦するミステリ。論理を逆手にとって悪ノリさせたような、軽妙な会話が多数繰り広げられます。たぶん、土屋さんの普段のエッセイもこのような雰囲気なのだろうなーと思ったり。面白かったけど、ミステリか?これは…。
森さんの『そこに論点があるか、あるいは何もないか』。こちらは、本編書籍化の記念企画、という設定の『架空の後日対談』を記した短篇。ただのお笑い小説かと思いきや、ラストにどんでん返しが待っています。「そういうオチかー」と読み終わって、してやられた気分になりました。一回読んで、また最初から読み直すと面白さ倍増です。