薬を巡って馬鹿騒ぎ。

1931年12月、NY。
錬金術師は、自分が作り出した麻薬が人間を最高の世界へ導くと信じていた。
麻薬中毒者は、薬漬けの日々から抜け出せず葛藤していた。
ルノラータファミリーの幹部は、自分の仕事が上手く運ばないことに苛立っていた。
ガンドールファミリーの幹部は、これから激化する組同士の抗争を予感していた。
少女は、消されてしまった兄の仇を討つ決意を胸に秘めていた。
キッカケは、鞄に詰まった大量の薬。この始まりの一枚によって、彼らの運命は止まることを知らないドミノ倒しのように連鎖していき、そして…。
『1931』前後に起こっていたもうひとつの『馬鹿騒ぎ』を描く、「バッカーノ!」シリーズ第三弾。

うーん。面白いことは面白いんだけど。


やや落ちた…かな?
最初と2番目が素晴らしかっただけに、本作には先の二作ほどの面白さは感じませんでした。1931と同時進行で更に別の事件が起こっていたという構成は、確かに驚きポイントがあちこちに仕掛けられていてそこそこ楽しめはしたんですが、1931の後日談というか、サブエピソード的な印象がぬぐえませんでした。アニメを視聴した時も、1932のエピソードは全体の補強として扱われているように感じたんですが、小説のときからこのような造りになっているエピソードだったようですね。あとがきを読むと、1931、1932は3ヶ月連続で刊行されていて、しかも最初の2冊がなまじ展開を盛り込んでいるだけに、ますます1932が「サブ」として見えてしまいます。まぁ、成田先生も今回は「ほのぼの」*1がテーマと言っておられますし、そのような見方で正解なのかもしれませんけど。
いやしかし、クレアは本当に美味しいキャラですねー。今回も読者の注目を持っていきっぱなしじゃないですか!シャーネと再会できなかったのが残念極まりない。次は2001だから仕方ないとして、1933では今度こそ会えるといいですね。
ところでアニメでは、この1932の部分をかなり改変している(というかエピソードをごっそり削ぎ落としている)ので、これがアニメ第二期を製作するときのツケとして廻ってくるかもしれないのが少し不安です。原作の雰囲気をそがないようにしつつ、どのようにこのハードルを越えるか。アニメスタッフの手腕に期待したいです。
しかし、エナミカツミさんは一冊一冊重ねるごとに、どんどん絵が巧くなって行くなぁ。

*1:本当にほのぼのかは甚だ疑問ですが、マルティージョの皆さんに限れば、確かにめちゃめちゃほのぼのしてます