「中国のダンボール入り肉まんのNEWSを聞いてなぁ、眉一つ動かさなかったのコイツだけやぞ!」

ホームレス中学生

ホームレス中学生

「これからは各々頑張って生きてください。…………解散!」
中学一年生の一学期の始業式の日、父親から突然告げられた一家離散宣言。家のあらゆるものが差し押さえにあい、帰る場所を失った僕は、兄姉たちに迷惑はかけられないと一人で生きていく決意をする。自販機の小銭を拾い、雑草を食べ、公園のウンコのような遊具を寝床にする毎日。人生で最も過酷で、最も惨めな夏休みだった。けれど、人々の手助けで家族は再びひとつに。中学から高校へ、そして芸人へ。僕は大人に成長していく。
人気お笑いコンビ・麒麟の田村裕がこれまでの貧困人生をつづった私小説


読み終わりました。父に薦められてから随分時間がかかってしまいましたが。
芸人本を読む趣味は自分にはあんまりないのですが、これは比較的楽しく読めました。田村少年のド貧乏な体験がとにかくとんでもなくて*1、あわれながらも笑いを誘います。凝った表現もなく、淡々と自分の体験を綴っているので、テンポが非常に速く、読んだ時間だけを考えれば、おそらく1時間もかからなかったものと思います。それでいて単純で読みやすいので、広い年齢層の人々に支持されているのも納得です。
そして、あらすじには明言されていないことではありますが、田村少年はこの一家解散宣言より前に母親を病気で失っています。後半からはその母親に対する想いが色濃く現れていて、ありがちな表現で申し訳ないのですが心に響きました。特に最後の一文がすばらしい。泣きそうになりました。恥ずかしながら、自分もこんなことが言える人間になりたいものだと思いました。
ところで、タイトルにもなっているホームレス時代のお話は全体の三分の一ほどの分量しかありません。タイトルを見たとき、てっきり全編がその頃の話だと思っていたのですが。そこ勘違いしている人は少し注意。
実写化がすでに決まったそうですが、これは映像にしてしかるべきな本であると言えるでしょうね。余計な感情描写はほとんど無いので、映像にしやすそう。実写版を見たら本当に泣きそうな気がします。楽しみです。

*1:大半はこの本を読む前にTVで聴いたことがあるものばかりなのですがそれでも