第1回 コズミック 世紀末探偵神話

コズミック流 (講談社文庫)

コズミック流 (講談社文庫)

コズミック水 (講談社文庫)

コズミック水 (講談社文庫)

「今年、1200個の密室で、1200人が殺される。誰にも止めることはできない」
密室卿を名乗る犯人から1994年を迎えると同時に送りつけられた犯罪予告状。
その予告どおり、日本全国で毎日3〜4人の人間たちが“平安神宮の群集の中”、“運転中のタクシーの中”、“スキーゲレンデのゴンドラ上”――と、密室ともとれる状況下で首を斬られて殺されていく。更に被害者の背中には殺された順に血文字で「密室○(○←には旧漢数字が入る)」と記されていた。
一方で日本から遠く離れたイギリス・ロンドンではあの歴史上最も有名な未解決事件の犯人―「ジャック・ザ・リッパー」の後継者を名乗る「ジャッキー・ザ・リッパー」による連続首切り殺人が発生していて……。
しかも、どうやらこの二つの事件は同一犯による犯罪らしく!?
350人の探偵を保有する日本有数の探偵組織―日本探偵倶楽部の精鋭たちが、事件に挑む「JDCシリーズ」第一弾。清涼院流水からの分厚い名刺代わりにして挨拶状。

やはり第1回はデビュー作から始めなければ。というわけで「コズミック」です。
とは言え、ねぇ。
この小説は空前絶後の問題作という鳴り物入りの宣伝で出版されました。
しかし、もう刊行されてから11年の月日が経過しています。
……。
もはや「コズミック」は問題作の部類には入らないのではないでしょうか?
少なくとも、Gen9にはこの小説のどこが問題なのか、さっぱりです。
九十九十九のTV放送を見た視聴者たちが気絶する、とか、ジョン・F・ケネディ宮本武蔵織田信長も○○○○○だった、というところは「ありえねぇだろ!」と読みながらツッコんだりしましたが、それはもうGen9の中では「しょうがないなぁ、この人は。ハッハッハー」みたいな笑いで済まされるような箇所であって、特別問題にするようなとこでもないような気がするんです。
Gen9は西尾維新佐藤友哉舞城王太郎にどっぷりつかってから、清涼院流水に入ってしまったので、当時の古参ミステリ読者の気持ちにピンと来ませんでした。「へー、なんか変な小説だけどなかなか面白いじゃんw」というひじょーに軽い気持ちで流水ファンの道をちゃくちゃくと登ってしまいました。だから、西尾維新などを代表する0年代作家が広く読者に浸透しきった今現在の状況なら、この小説も容易に受け入れられてしまうのではないだろうか、とそう思います。*1絶対気に入る、とまでは行かないにしても「なんだこのふざけた本は!」と激昂することはたぶんないのでは。
だから、Gen9がそんなあなたに言えるのは「ちょっと変な小説だけど、ひょっとしたら気に入るかもよ」ということだけです。「多少メチャメチャでもいいから、とにかく驚かせて欲しい!」というミステリを求めている人になら、この小説はたぶん最高だと思います。
でも、できれば2005年以降の流水大説を読んでから、この作品に挑んで欲しいかもです。作者本人も、「今のが大学生の文章だとしたら、当時のは小学生の作文みたいなもの」と言っておられますし。Gen9のオススメは「ぶらんでぃっしゅ?」。少なくともこの小説を読んでから「コズミック」に入って欲しいですね。
余談になりますが、Gen9はとある経緯で「コズミック」のメイントリックを、読む前に知ってしまいました。それでもなお、とても面白かったのですが、もしメイントリックを知らずに読んだらどれほどの衝撃だっただろうかと悔しくて仕方ないです……。あのときほど自分の記憶が消せたらなぁと思ったことはないですね。ははは、はーはっはっはっは……ふぅ。

*1:事実、高校生の頃、級友の何人かにコズミックを貸し出したことがあったのですが、全員から「これ面白いな!(お目々キラキラ)」という評価を頂戴しました。なんつーか、フツーに面白い、という感想しか抱かなかったようです…