ぶ「きみ」で そ「ぼく」な か「壊れた世界」

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

不気味で素朴な囲われた世界 (講談社ノベルス)

不気味で素朴な囲われた世界

不気味で素朴な囲われた世界

分針だけが止まったまま動かなくなってしまった、上総園学園の時計塔。
中等部一年生・串中弔士は、その壊れた時計塔が退屈な"日常"が"非日常"に変わるキッカケになることを期待していた。
『静かなる人払い令』病院坂迷路と過ごす日々。学園から畏怖される『奇人三人衆』串中小串、童野黒理、崖村牢弥との奇妙な人間関係。
そして起こってしまった殺人事件。迷路と弔士は事件を解決しようと「お遊び」の探偵ごっこを開始するが……。
囲われた世界をめぐる、「きみとぼく」本格ミステリ第二弾。


面白かったー。今年は軽くて読みやすい「刀語」に慣れてたせいかすっかり忘れてた。ありがちな言葉で申し訳ないけど『これぞ西尾維新』。
ちなみに読んだのはノベルス版。ハードカバーと迷ったけど、決め手になったのは、TAGROアニキのイラストがあること。値段。カバー折り返しのfrom NISIOISN。この3つです。そういえば、ノベルス版とハードカバー版ではあとがきが違うらしいので*1読み比べると楽しいかもしれないですね。
キャラクターの方に目を向ければ、今回の探偵役・病院坂迷路はスゴかった。
だってずっとネタバレネタバレ。
むしろ迷路がスゴいというよりは、弔士の方がすげーんじゃねーか、とか思いました。
あとパロディネタ。
刀語」では入れ込めないし、「トリプルプレイ」ではほとんど小ネタは入れてなかったしな。「化物語」では大盤振る舞いだったけど。西尾作品では約10ヶ月ぶりに目にしたので、また新鮮な気持ちで楽しめました。
あえて言うけど、この小説は本格ミステリと言うよりは、アンチ本格ミステリだと思う。
だって、物理トリックの説明は奈津川サーガみたいにかっとんでたし、随所に本格ミステリを揶揄するセリフはあるし。前作がしっかりとした新本格ミステリになっていたのに対し、こちらはそれを否定するというような。「壊れた世界」と「囲われた世界」はお互いがお互いの裏返しであるようなミステリだと思いました。結末もあべこべだし。
それにしても、今回のTAGROアニキのイラストもすごくいい。「ひまわり伝っ!」や「変ゼミ」でも思ったことだけど、「きみぼく」の頃と比べて、こう、更に萌えるというか……洗練されたと言うか…シャープな絵柄になったような気がする。*2
ちなみに、「きみとぼく」本格ミステリは、西尾さんがTAGROアニキのイラストを見たいがためにあと一作だけ続くらしい。
タイトルは
きみとぼくが壊した世界
です。
いよいよ、病院坂びっくり箱の登場かも?w*3

*1:「きみぼく」新装版もあとがきが違う

*2:やはり病院坂のデザインは逸脱。特にあの目。常々思うのだけど、これから先どんなイラストレーターがすばらしいイラストを描こうと、目に関してだけは、病院坂のデザインを絶対に越えられないと思う。

*3:それはないか。