幾多の傑作に寄り添うように、確かに彼はそこにいた。

 

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

天帝のはしたなき果実 (講談社ノベルス)

 今日、8月3日は、本格ミステリの父、伝説の編集者・故宇山日出臣の一周忌らしい。ミステリーの館のメルマガでそのことを知って、まがりなりにもミステリ読者の末席を汚す者として、なにか書かないといけないのでなかろうかと思った。

 実は、今「天帝のはしたなき果実」という小説を読んでいる。この小説は故宇山氏が最後に推薦文を書いた作品だ。宇山氏が大好きだった、本格ミステリと青春小説の融合を形にしてる作品である。宇山氏に敬意を払うためにも、一周忌である今日中に読んでしまいたいところなのだが、なにぶん分量が多いので正直微妙……。
 未だに軍隊や憲兵が存在する昭和の帝国主義をそのまま受け継いだ状態で発展してきた仮想の日本が舞台のミステリ。フランス語のルビがめちゃくちゃ多くて最初はかなり読みづらかったのだけど、語り部の軽妙な語り口もあって途中からはするする読めた。きっと最後まで面白く読めるだろうと確信している。

 宇山日出臣…彼がいなければ新本格のムーヴメントは起こらず、メフィスト賞という破天荒な新人賞も起こらず、それによって、Gen9が愛読している大半の作家たち…清涼院流水西尾維新佐藤友哉森博嗣、といった面々もこの世に現れることはなかっただろう。いわば、Gen9の読書の大半はこの人によって送り出されているわけであって、どんなに感謝しても足りない。
 彼が亡くなって1年。
 
 ココロから黙祷を捧げたいと思う。