『コズミック・ゼロ 日本絶滅計画』 清涼院流水

コズミック・ゼロ

コズミック・ゼロ

そして、だれもいなくなった。

1月1日、平安神宮。初詣に賑わうこの場所から、日本絶滅計画は幕を開けた。
警視庁、県警本部が謎の集団に占拠されると同時に、圧倒的な速度で日本から人間という人間が消失していく。
未曾有の大災害に戦々恐々とする人間たちを消していくのは、特殊な能力を持つ七人組“セブンス”、そして“LET”。裏側で様々な思惑と打算が蠢く中、彼らは確実に日本絶滅に向けて、計画を加速させていく。一体どうやって、そして何の目的で?
コズミックから12年。生まれ変わった清涼院流水が、再び日本終局のシナリオを描く。
今度こそ、一人残らず殺します。


久々の流水大説!昨年の彩紋家事件からおよそ一年が経過していますが、嬉しいことに同時期刊行である『B/W』に加え、六月末にはケータイ大説『忘レ愛』の刊行も決定しており、ちょっとした新作ラッシュが続くんですねー。お財布余裕保たせておかないと。
そんなわけで、コズミック・ゼロです。
タイトルからデビュー作・コズミックの続編かと思ってしまいそうですが、話自体はまったくの別モノ。が、しかし1月1日から人が死んでいく、事件の始まりが平安神宮、1月17日がターニングポイントになるなど、どこかコズミックを連想させる要素が盛り込まれていて、流水ファンならニヤリとしてしまうこと請け合い。ジャンルがミステリではなく、パニック・サスペンスとなっている通り、事件の謎を暴くのが本質ではなく、ただひたすらに日本中の人々を消していく過程を綴った、いわばシミュレーション小説。大説おなじみの言葉遊び群は今回はなりを潜め、代わりにナイフのように研ぎ澄ました冷淡な文章で、確実に日本絶滅へ向けての物語が紡がれていきます。
今作は一種の群像劇のようになっていまして、日本絶滅に翻弄されていく者、そして裏で画策する者、様々な登場人物の視点をとっかえひっかえしながら、少しずつ物語が収束していくような構成になっています*1。始めはそれぞれバラバラだった人間たちが思わぬ所で繋がっていき、やがて一本の線の上にすべて並ぶ。なかなかどうして愛すべきキャラもいるんですが、そこは流水大説。思わぬ途上で情け容赦なく散っていくことも多々ありで、なかなか気が抜けません。あなたのお気に入りのキャラは果たして生き残れるのか。ハラハラしながら読み進めていただきたくございます。初期の作風からすると、様相も色々変わってるのでちょっぴり物足りなくもあったんですが、大説特有の凄まじさは相変わらずなので、初めて読む流水としても割とオススメかもしれません。
ちなみに、自分のお気に入りのキャラは…×××でありながら格好良すぎる北野と川北も良かったんですが、やはりベストは首相さんw 情けなくって、お馬鹿なんだけど、決して悪い人じゃないんだよなぁ…。こういう小説では、お偉いさんて真っ先に死ぬもんですが、役に立たないのにこんなに憎めないってのも、ちょっと珍しいかな、なんて思ったりしました。

*1:多人数視点、っていうのもコズミックを思い出しますね