『四方世界の王4 あらゆるものの半身、月齢の30』 定金伸治

四方世界の王4 あらゆるものの半身、月齢の30(シャラーシャ) (講談社BOX)

四方世界の王4 あらゆるものの半身、月齢の30(シャラーシャ) (講談社BOX)

「違う! あえて言うなら、嫉妬しているというだけだ!」

イバルピエル率いるエシュヌンナと、シャムシ=アダド率いるアッシュール。天才皇太子と傭兵王が全面衝突へともつれ込む。策に策を重ねる熾烈な争いの中、シャズは戦乱の隙をつくべく暗躍を続けるが…?
皇太子に捕らえられた傭兵王の息子。ナムルにしか懐かない神秘の女。人知れず40を所持する謎の青年。
激しく人々が蠢くさなか、明かされるのはバービルムの王子の正体。風雲級を告げる四方世界において、少年少女は熾烈な窮地に追い込まれる…!


大河ノベル第四弾。すでにこの物語も三分の一の道程を進んでおり、時間が経過するのは早いもんだと緑茶をすすりながらしみじみ思う今日この頃です。…なんかのたびに、この導入を使い回しているような気がしてなりませんが。ごたくは抜きにして手早く感想へ行きましょう、うん。
あらすじにも大きく扱われている通り、今回は北の傭兵王・シャムシ=アダドと、東の皇太子・イバルピエルの全面対決が話の中心となります。一代で王へ成り上がった男と、若いながら神懸かりの勘を持つ少年。どちらも人が及ばぬ才を持っている際物なだけに、相手の裏の裏をかく、凄まじい戦略が繰り広げられていきます。最終的に勝敗は決するわけですが、果たしてどちらに軍配が上がるのか。最後まで刮目していただきたいところです。
相変わらず人間同士の絡みも魅力的でして、特に自分が気に入ったのはイバルピエルと囚われのイシュメ=ダガンのやりとり。前巻で見事な駄目っぷりを見せつけてフェードアウトするかに見えた彼ですが、誰にでもなれなれしく接してくるイバルピエルが、そんな格好の相手をほおっておくはずもなく。かくして、敵同士という立場にありながら、二人の間で妙に青春めいたこもごもが繰り広げられることになります。あからっさまにツンデレ性質なダガンさんが、妙に愛しいのだなぁw
ツンデレと言えば、今巻でも我らがシャズさんの魅力は炸裂しまくりです。一巻の頃の隙のない雰囲気はどこへやら、失言もぽろぽろ目立つようになり、狗であるはずのナムルにやりこめられてしまう一幕も。更に酒に酔った勢いで、ちょいと致命的な発言までしてしまいます。四冊目にしてここまで変化したシャズが、果たしてこれから先どこまで転がり落ちていってしまうのか。考えただけでニヤニヤが止まりません!
と、キャラ関係ばかりスポットを当ててしまいましたが、実は物語の重要な謎が明かされたりもしているのがこの巻。ナムルとバービルム王子の意外な関わりが紐解かれ、物語の中核が一気に明るみに出てきました。
ラストは割と大ピンチな場面で終わっていることもあり、次回以降に一層期待がかかりますです。