『新興宗教オモイデ教』 大槻ケンヂ

新興宗教オモイデ教 (角川文庫)

新興宗教オモイデ教 (角川文庫)

「宗教はコワイねぇ」

一ヶ月前まで、僕の隣の席にいた女生徒・なつみさん。精神に異常をきたし、学校をやめてしまったと噂された彼女は、ある日、新興宗教オモイデ教の信者となって、僕の前に現れた。彼らは、メグマ波なる不可思議な存在を用いた『誘流メグマ祈呪術』を操り、いらない人間を発狂させるという、恐ろしい行為を繰り返していたのだ。更に彼らが言うには、この僕にもそのメグマ波を操る能力があるらしいのだが…。
狂気と殺戮をぎっしり詰め込んだ、大槻ケンヂ作家デビュー作。


最初に告白しておくと、自分は、大槻ケンヂさんの小説を、半分なめてました。
確かにそれなりに素晴らしいのかも知れないけど、それはやっぱりロッカーとしての人気があればこそのモノであって、いわゆる『有名人が書いたにしてはよくできてる』という括りに含まれる程度の小説なのだろう、とどこか思っていました。
土下座で謝罪いたします。大変申し訳ありませんでした。
はっきり言って、この作品、傑作でございます。
単純に文章だけとっても、これが本当に初小説かと疑うほどの出来で、適度に凝っていてかつ読みやすい。勿論それだけでなく、ストーリーも奇想天外でありつつ面白い。面白すぎる。電波で人を狂わせていく宗教団体に入った少年が、かつて気になっていた少女と共に、超能力的なバトルを繰り広げていくのですが、黒くてグロくて狂ってて、でも最高に青春小説で切なく悲しい。全部が全部、すべての要素が自分にとってのツボばかりで、興奮しながら一気に読んでしまいました。あえて言うならそう…今の自分の大好きな作家さんたち、佐藤友哉西尾維新御影瑛路入間人間…そういうダークなライトノベル(?)の、源流というか大本というか、そんな空気を感じました*1。調べてみるとこの作品、ライトノベルのセカイを初めとする、サブカルにかなり影響を与えた作品のようで、ご存じの通り、ガガガ文庫にて、外伝となるシリーズも三冊ほど発表されていたりします。そりゃその方面にどっぷり浸かった自分の型に合うわけだよなぁ。もし、中学の頃にこの作品と出会っていたら、今頃本の虫ではなく、アングラロックバンドファンとして精進を重ねていたかもしれない…*2
いや、予想を遙かに上回る面白さで、本気で度肝を抜かれてしまいました。ファンの間で傑作と名高い『くるぐる使い』、そして前述のガガガ外伝も近いうちに読まなければ!

*1:あとがきにも書いてあった、最初の「必殺!シリーズ」的なコンセプトだったら、よりそういうラノベに近かったかも

*2:いや、今からでも二足ワラジでやっていけるかもですけど