『とらドラ10!』 竹宮ゆゆこ

とらドラ10! (電撃文庫)

とらドラ10! (電撃文庫)

──この世界の誰一人、見たことがないものが、あった。

冬。
雪の舞い落ちるバレンタインデーの夜、二人は逃げ出す。
ままならない世界を前に、虎と竜はどんな未来を選び取るのか。
そして、残された北村、実乃梨、亜美の想いの行方は。
シリーズ完結巻。完全燃焼、竹宮ゆゆこ


あー、終わったなー、と。
それだけが頭の中に渦巻いていて、キーを叩く指にも、なかなか力が入らない、そんな今現状。
いや、嘘です。それだけではありません。ほんとは、もっと色んなモノが、シナプスというシナプスを駆け巡っています。


※この先全文格納。
長いです。アホみたいに長いです。しかもネタバレ全開です。その上取り留めもないです。
戯言に付き合う余裕がある方のみ、どうぞ。


大河の告白。橋の上でのこと。
大河の父親と母親の確執だけで手が一杯で、原因なんて考えもしてなかったのですが、なるほど、と気分悪いながらも納得でした。キスにまで至ったときは、やったー!と快哉…と言うよりかは、なんだろう、感無量というか。不器用で鈍くて意固地な二人が、ここまで来たんだな、とか。我がことのように嬉しくて、自分でも可笑しかったです。
しかし、「嫁に来い」発言は、ほんとに痺れました。初めて読んだ一巻の黒歴史大公開のときも、かっちょえぇコイツ…と思ったものですが…。本気で惚れました。
匿ってるときの、亜美の「悲しいわけじゃないよ!」も、さりげなく感動したり。意固地な亜美が、ここまで言えるようになったんだなぁ…。その後の「気持ち悪い」は笑わせてもらいましたw ずっとシリアスな地の文が続いていたので、それに小休止を入れる、いい緩和剤になってくれたと思います。
教室脱出一幕は、もう顔がほころんで仕方なかったw 小説でしかありえない、お決まりと言っちゃお決まりな展開ですが、もうね、みんな良いヤツだなぁって。春田の演技の上手さは、生徒会選挙のときにも出ていましたが、まさかあれが伏線だったとは誰が考えただろうか…。
独身…いや、恋ヶ窪ゆり先生も、最後まで苦労が絶えないな、と気の毒に思っていましたが、母親相手の啖呵切りはもう、文句なしにかっこよかった。報われない人だけど、本当に良い先生なんだよなぁ…。本気で嫁にしたい。
トイレ騒動を経て、やっちゃんの実家へ。しかし、本当にシリアスとギャグの緩急の付け方が絶妙すぎる。ところどころでガス抜きのように笑い所を入れてくれるおかげで、重い空気にも屈さずに読んでいけます。まぁ、これはとらドラ!全編に渡って言えることなのですが。投げキッスのところも、ギャグだとは思ったのですが、自分の場合はこれも感動ポイントになってましたw こいつら…たった一日で全力でラブラブじゃねぇか…、と。思わぬ所で目頭熱くなってました。
だから、その後の泰子の吐露は、まだそれを引きずっていたこともあって、本当にヤバかった。シリーズの終焉が後味の悪いモノになりそうで不安だったのは、竜児と泰子の関係が、もはや修復不可能に思えたからだったので。とらドラ!は恋愛小説ではあるのですが、同時に、圧倒的なまでに親子小説だったんだな、と今更ながらに実感したのはこの瞬間。竜児と泰子の親子が描かれたその直後に、泰子と清児・園子のもうひとつの親子も、さらりと、でも丁寧に描かれて。「やっと帰ってこられたんだねぇ」の一言は、中盤の涙腺の山場でした。うう。
部屋でのこと。このシーンは、会話も地の文も、一言一言すべてに何かの力が籠もってる気がして、何度も何度も読み返しました。このとき、竜児と大河が一線を越えたのではないか、という解釈もあるそうですが……どうなんでしょう。自分も読み返しましたが、どちらとも取ることが出来ませんでした。越えないことについて、竜児は言い聞かせるように述懐してるけれど、最後の一文はなんだかやけに意味深にも思える。たぶん、この場面は、竹宮さんが読者に向けて取った、故意の演出だったんだと思います。読めば読むほど、どっちとも取れる気がしてしまいますし。想像にお任せします、ということなんじゃないかな、と思いました。
そして、別れ。最初に読んだときは全然納得できなくて、納得できたあとも、正しいんだとわかったときも、悲しさが軽減されることはありませんでした。このまま、大河不在で終わってしまうのだろうか…と、嫌な想像が頭を離れませんでした。あと、このときの亜美の吐露にも、鳥肌が立ちました。ずっとずっと塗り固めていたプライドをかなぐり捨てて、素直な心からの想いを叫んでくれた亜美。見えすぎていて、それでいて複雑な心理を抱えていて、ずっとずっと一人を選んで佇んでいた彼女でしたが…ようやく、受け入れることができたんだな…と、これが終盤の涙腺の山場かと感じました。しかしそうではなかったw
ラストシーン。最初、竜児とインコちゃんの戯れを見たときは「これ、竜児が高校教師になってて、大河と結婚してて、高校三年っていうのは、読者を騙す叙述トリックじゃね?」と妙なオチを閃いてしまったのですが、さすがにそれはなかったw 最後に、大河が戻ってきてハッピーエンド、お約束なのはわかっちゃいるけど、そんな言葉じゃ貶めることなんかできやしない、有無を言わせない最強の王道っぷりがそこにありました。母親との確執の終焉は、あっさりしていましたが、後は読者が想像してみるというのも悪くはないかもしれません。ひょっとしたら、後日談の短編として、描かれるかもしれないですけれど。
そして、最終的には、お互いの名前をただ呼び合うだけのこのシーンが、自分にとって最大の涙腺弛緩ポイントでしたw このたった二言の会話も、何かのたびに何度も何度も読み返して…。討ち入り、電柱キックに始まり、二人のこれまでの道程が一瞬でかけめぐって、なんかもう……泣くしかありませんでした。


***


気が付けば、おそらくブログを開始してから最大級の感想文となってしまっているような気がします。もっと冷静に、読者としての視点を忘れずに書きたい気持ちもあったのですが、すいません、無理でしたw 読み返していて、自分でも気持ち悪くなるくらいの入り込んだ感想になっていますが、どうか笑い飛ばしてやってくださいw 最初に一巻を読んだときは、おっそろしいまでの傑作である雰囲気がびしびし伝わってきて戦慄はしましたが……よもやこれほどまでに大切な作品になるとは、思ってもおらず。
本当に、本当に自分は、大河と竜児たちのことが大好きだったんだなぁ…。
…それでは最後になりましたが、感謝の言葉を。
竹宮ゆゆこ先生。並びにイラストレーションのヤスさん。ありがとうございました。
こんなにも、自分を形成してくれる一部品となる作品に出会えることは、たぶん一生のうちでそうありはしない、素晴らしい事件だと思います。18歳という、心も体もややっこしくて面倒なこの時期に、『とらドラ!』と出会えたことに、心から感謝です。本当に、本当にありがとうございました。
そして、この作品を手に取るキッカケとなった、感想サイト・心の師匠の皆様方。うららさん、Mr.もやしさん、hobo_kingさんにも、精一杯の感謝を申し上げます。ありがとうございました。これからも付いて行きます!
更に、コメント欄や自身のブログで、刺激的な感想を書いてくださった、サバ味噌さん、西織白夜さんにも、感謝です。楽しかったです、ありがとうございます!これからもこんな感じで面倒なことやらかすかもしれませんが、どうぞ一笑に付してくださいw
そして、最後に。だらだら極まりないこの文章を、最後まで読んでくれた、『あなた』にも、全力感謝。最後まで辛抱強く読んでくださり、本当にありがとうございました!
それでは、竹宮さんの次の作品と、また出会えることを楽しみにしつつ。
いつの日か、虎と竜の咆哮を、再び目撃できることを願いながら。
とりあえず、筆を置きたいと思います。
さようなら。
また逢いましょう。