『レイトン教授とさまよえる城』 柳原慧

レイトン教授とさまよえる城 (GAGAGA)

レイトン教授とさまよえる城 (GAGAGA)

「この謎は解けますか?」
レイトン先生はにっこり笑って首を振った。
「解けないね。でも、解けなくていいんだ。この世の中には、解き明かさなくてもいい謎が、厳然としてあるんだよ」

闇の中に浮かび上がる、巨大な城。それは、空を飛んでいた……。
ナゾトキの大好きな、英国紳士・レイトン教授の助手・ルーク少年が目撃した空飛ぶ城。それは、この国に古くから伝わる伝承の一つ『さまよえる城』そのものの姿をしていた。更に時を同じくして、その城を長年追い求めていた蒐集家のトーマス・マクルハーン氏が、突如として行方不明に。師であるシュレーダー博士の依頼により、マクルハーン氏を見つけ出すことになったレイトン教授とルークは、モレントリー急行へと乗り込み、一路、ワルバラ平原へ向かう。
レイトン教授の友人である、変人科学者・チェルミー氏、そしてロンドンタイムスの女性記者・ロレイン嬢。ひょんなことから旅路に加わった、二人の新たな同伴者と共に、レイトン教授とルーク少年は、知られざる『さまよえる城』の謎の奥底へと踏み込んでいく……。


人気ナゾトキゲーム『レイトン教授』シリーズのノベライズ作品。シナリオはレベルファイブ監修による完全オリジナルで、執筆はこのミス大賞を受賞したミステリ作家の方がてがけています。自分は第一作『レイトン教授と不思議な町』のみプレイ済みで、ゲームの雰囲気が大好きなので手に取ってみたのですが…。
うむ、とても面白かったです。
ナゾトキ自体は全部で8つと、ゲームのそれに比べれば非常に少ないのですが、それ故にストーリーを断続的に中断させられることなく、じっくりと物語世界を満喫することが出来ました。ストーリーも、原作のミステリ調でいて、ちょっぴりファンタジーな雰囲気を忠実に再現していて、原作ファンとしても不快になることなく、いやむしろあの世界観を文章で存分に楽しめる秀作だったと思います。
ちょっとラストが早足だったかな、という気がしないでもないですが、いやいやそれでも十分な完成度。昔大好きだった空想科学小説の数々を思い出しながら、夢中になって読み終えてしまいました。いやー、久々に心から『ハラハラドキドキ』ってヤツを楽しみました。童心に帰るって、こういうことなのかな。
もちろん、シリーズのネタバレにも配慮してあり、ゲーム未プレイの方でも安心して楽しめます。原作の空気を壊すことなく、小説で完璧に再現して魅せたこの『さまよえる城』。実に見事な出来映えでした。やったことある人もない人も是非ご一読を。人を選ばないオススメ作品です。