『ハーフボイルド・ワンダーガール』 早狩武志

ハーフボイルド・ワンダーガール (一迅社文庫)

ハーフボイルド・ワンダーガール (一迅社文庫)

……説明なんて、無論、するまでもないだろう。

ずっと想いを寄せ続けていた、幼なじみに、突然告白された少年・湯左俊紀。
まさかの両想いフラグに、一気に有頂天に。だが、彼女から告げられたのは愛の告白ではなく、身に覚えのない『責任』が生じてしまったという衝撃の宣告だった。
指一本と触れたことのないはずの幼なじみから、父親になることを迫られ、途方に暮れる俊樹。そんなとき、彼の前に現れたのは、学校中から曲者と称されるミステリー研究会の会長・佐倉井綾だった。
そして始まる、ヘタレな彼と大胆な彼女の事件捜査の日々。果たして、一人の少女を傷物にした真犯人を見つけだし、身の潔白を証明することができるのか?
PCゲームシナリオライターが送る、ミステリチック青春ストーリー。


ほぼさんの感想に興味を惹かれて、読んでみました。ミステリ系ライトノベル『ハーフボイルド・ワンダーガール』です。
ミステリとは銘打ってありますが、やはりほぼさんも指摘されてるとおり、すべての真相は、序盤の展開を読んでればあらかた推測がついてしまう、シンプルな内容。ゆえに、本題はミステリそのものではなく、事件を巡って描かれる登場人物達の思惑とか、その辺の部分になると思います。
分量的には小粒な作品ではありますが、事件の捜査が進む中で、二人の主人公の心の動きが、とても丁寧に描かれています。気弱だけどやるときはやり、そして自分よりも何よりも、大切な人を大事に思う俊紀と、大胆かつ冷静沈着、でも名探偵らしからぬ動揺もする、決して大人ではない綾。完全じゃない少年少女のやりとりが青く瑞々しく書かれていて、読んでてなんだか眩しかったです。
惜しいのは、やっぱりボリュームの少なさですかね…。捜査パート、解決パート共にテンポが早いので、登場人物達に十分感情移入する前に、物語が終わってしまったと言うか。短い中でうまいことお話を収めているとは思ったんですが…。うーん。
ただ、やっぱストーリーテリングの能力は素晴らしいと思います。この作品には、終盤、相当自分本位な人間たちが登場したりするのですが、彼らとのやり取りにも、相応にむかむかさせつつかつ、本当にありそうだな、と感じさせる妙なリアルさがありましたし。で、このちょっと後味悪い感じが、少年少女の展望を味付けする、良い感じの苦みになってるような気もしました。続きがあるなら、ぜひ追いかけたいところです。
あと、最後に言いたいのは挿絵について。いや、基本的にはかなり好みなのですが、解決編のそれがちょっとコメディタッチすぎるような…。かなりシリアスかつ見せ場なシーンなので、綾にも名探偵らしく渋くかっちょよくキメてほしいところだったのですが……それがちょい残念。
あ、あと表紙でもなのですが、挿絵の中にサブリミナル的に登場してる、妙にリアルなスマイルフェイスのおっさんが激しく気になる。誰か、彼について詳細をプリーズ!!