『とらドラ8!』 竹宮ゆゆこ

とらドラ!〈8〉 (電撃文庫)

とらドラ!〈8〉 (電撃文庫)

「……弱くて、弱くて……弱くて……もうやだ……」

始業式前日。インフルエンザの症状からようやく回復した竜児だが、クリスマスの夜のショックからは未だ立ち直れずにいた。そんな中、大河は竜児に決定的な自立宣言を叩きつける。竜児と実乃梨の、恋の成就のために。
そして迎える新学期。皆が楽しみに待つ沖縄行きの修学旅行は、どうやら見当違いの方向に突き進んでいる様子で?そんなことにかまってられない竜児は、ぎくしゃくしながらも実乃梨にもう一度向きなおうとする。迫る修学旅行を機会に、実乃梨の真意を確かめようと決意するが…。
いつの間にかなんだか雰囲気が変わっている大河と北村。クリスマス以降、周囲に対し、露骨に攻撃的になった亜美。それぞれの思惑が渦巻く、不穏な修学旅行の行く末は?


前回の感想で、キャラクタの思惑が水面下で動きまくっている、と書きましたが。
今回は動いてる、というもんじゃありません。耐えきれなくなった猜疑心が、表面にまでぶしゅぶしゅ噴出している感じ。
というか、我々読者の目線で見れば、彼らがなんでそんな行動を取っているのか、完全にわかっちゃってるんですよね。あの人がああなのは、自分自身にふんぎりをつけるためだし、あの人がああなのは、あの人を後ろめたく思ってるからだし、あの人がああなのは、色んなことに気づきすぎて周りの鈍さ・狡猾さが腹立たしいからだし。すべてわかっているんです。
だからこそ、彼らの思惑のがらんじめ状態が、苦しくて仕方がない。もどかしいんじゃないんです。彼らは決して鈍感なわけじゃない。
見えないところが本当に見えないから、迷って惑って疑って。
見えてるところが本当に見えすぎているから、案じて騙して後悔して。
何度も何度も書きますが、痛いです。誰が悪いワケじゃない、それぞれが自分の信念でもって行動してるから、救いがなくてどうしようもない。苦しくて苦くて、最悪に痛いです。
そして、今回、各々の思惑が表に吹き出したことで、ある人物が抱える大きな爆弾が、遂に知れることになってしまいました。明かされてしまった秘密は、彼らの動向にどのような影響を与えるのでしょう。
すべてのがらんじめを紐解くきっかけとなるのか。はたまた、手に負えないほど結びを強固にする、最悪の火種となるのか。
またしてもとんでもないところで寸止めされてるだけに、次巻が待ち遠しくてなりません。


読み終えてから気づいたのですが、今回は『独身(30)』の記述にまったく違和感を感じなかったな…。純粋に、彼女へのいじりが少なかった、ということもあるでしょうが。本筋に目がいきすぎて完全スルーでした…。ごめんよ独身。