『Classical Fantasy Within 第3話 火を噴く龍』 島田荘司

Classical Fantasy Within 第三話 火を噴く龍 (講談社BOX)

Classical Fantasy Within 第三話 火を噴く龍 (講談社BOX)

ああ、これが戦争なんだなと思った。

ついに筑波の空を蹂躙し始めるB29の大群。
次々と繰り広げられる爆撃に、なすすべもなく逃げまどう人々。その中には「ぼく」と「母」もいた。日本軍が開発した最新秘密兵器「怪力光線砲」も遂に天へ火を噴くことなく爆撃にさらされ、無惨にも焼け落ちていくが…。
終わることのない怪異の数々と、空襲によって極限にまで醜く墜ち果てていく人間たち。体験したことのない絶望にさいなまれていく「ぼく」の運命は…。
CFW、第一部完結。


胸っ糞悪い。
読んでる間中、ずうっと感じていた感情はこれでした。
今までも、「ぼく」や「母」に対して辛く当たってきた村人たちでしたが、遂にこの巻に至ってその極致が描かれています。行き場を失った怒りと恐怖は、こんなにまで人間を醜く変えてしまうのか…とか。しかも、ここに描かれている暴虐は、9割9分9厘、戦中行われていた実情なんだろうな、きっと…。すばらしい作品であることは確かなのですが、とにもかくにも悲しい展開ばかりが続くので、ファンタジーと聞いてハッピーでファンシーな内容を期待してる人は、手に取らない方が吉でしょう。
しかし、謎が謎のまま放置されての完結か…。残された伏線やら展開は、全12巻に渡るストーリーの中で、次第に「本格ミステリ」の骨として昇華されていくのでしょうか。4巻発売まで、あと一月ちょっと。待ち待ちあるのみ。