『彩紋家事件サード 彩紋家の一族』 清涼院流水

彩紋家事件 (3) 彩紋家の一族 (講談社文庫)

彩紋家事件 (3) 彩紋家の一族 (講談社文庫)

「イエス、アイ・アム」

探偵たちの必死の防衛もむなしく、正確に毎月十九日に不可解な死を遂げていく彩紋家の縁者たち。さらに時を同じくして毎月十九日、日本各地で白尽くめの殺人鬼『白夜叉』による、連続通り魔事件が発生していることが明らかになった。
彩紋家の事件と、白夜叉の事件。二つの連続事件は交錯し、探偵たちに更なる謎を突きつける。次第に追い詰められ、疲弊し、存続も危ぶまれていく日本探偵倶楽部。それでも調査の果てに、事件の真相を看破し、遂に犯人と対峙した探偵たち。そこで明かされたのは、日本史、ひいては世界史の根幹を揺るがす、驚愕の真実だった。
……そして、時間発生から三年目の三月十九日。毎月十九日に、十九ヶ月連続で、十九人の被害者を出した未曾有の凶悪犯罪『彩紋家事件』は閉幕した。
……真の『伝説』が、幕を開ける。


彩紋家事件の完結編、『彩紋家事件サード』。読み終わりましたでございます。
以前ノベルス版を読んでいるので、そんなに感銘は受けないかなーって思ってたんですが、久々に読んでみると、いや、やっぱすごいわ。事件の規模こそ小さめですが、『カーニバル』にもひけをとらない解決編。奇術のトリック解明も、無理なくストーリーに絡めながら組み込んであって、全体の完成度も高かったです。JDCシリーズ最高傑作と言い切って、申し分ない大作だったと思います。ファーストを読んだときは、あんまり改訂していないかなと思っていたのですが、実はストーリーはそのままに、かなりの頻度で文章をいじってあったようです。前回読んだノベルス版よりも、格段に読みやすくなっていたような気がしました。
いやー面白かったです。流水大説はやっぱこうじゃなくちゃ!
また、大説の文庫化恒例企画と言えば、巻末袋とじセルフライナーノーツ。今回もありまして、コレが今までで一番面白い内容でした*1。最近の大説の傾向について触れたり、横溝作品への思いを語ったり、奇術愛好家としての一面も見せたり*2……中でも興味深かったのが、一昨年亡くなられた故・宇山日出臣さんのこと。この『彩紋家事件』は、お世話になった宇山さんに捧げた作品でもあることで、かねてから有名だったのですが……、宇山さん、この作品を読み終わることは、遂になかったんだそうです。
周りから『自分のこと以外では絶対に泣かない男』と言われ続けて久しいGen9ですが、袋とじ後半では、不覚にもちょっと泣きそうになりましたよ。流水さんがこんな風に心情を吐露するのは、けっこう珍しいことなので、よほど宇山さんが亡くなったのがいまだに心に響いてるんだろうなぁ、としみじみ思いました。
とまぁ、そんな感じで、色んな意味で買いな本でした。ノベルス版をすでに読んでいる方も、ゼヒお買い求めいただきたく候でございます。

*1:どうでもいいんですが、今回は流水さんの一人称が、「僕」から「流水」に変化しているのが妙に気になったりもしました

*2:あのカッパーフィールドの奇術、流水さんは独自研究ですべてのトリックを解いているそうで…本気で脱帽です