『七不思議の作り方 Wonders Wander』 佐竹彬

七不思議の作り方 (電撃文庫)

七不思議の作り方 (電撃文庫)

もう、不思議はない。それが不思議。

五月の半ば。私立桐ヶ谷高校で、次々と怪事件が勃発する。月曜の幽霊騒動から始まり、火曜日は教室から人が消え、そして水曜日には屋上へと続く十三階段が出現した。
数々の不思議な出来事と同時に、桐ヶ谷高校に代々伝わる、とある団体の噂がふたたび囁かれ始める。
『彼らの』名は『SAW』。『Six Administrators of Wonder(六人の不思議管理者)』。学校の七不思議を製作・管理しているという謎に包まれた組織。
面白いことに目がないハイテンションな高校生・秋月千秋は、人見知りなクラスメイト・春日未春と共に、SAWの正体と事件の解明に乗り出した。しかし、同じくSAWの正体究明に燃える新聞部や、なにやら怪しげな行動をとる生徒会までもが話に絡んできて…?


久しぶりの星2つ。実際は2.5くらいなんですが、ちょっと厳し目につけてみました。
七不思議を追い求める、生徒たちの青春グラフィティってことなんですが…、うーん何といいますか。
まず、何といってもミステリ成分が弱い。ミステリ系の作品を書いてきたこの作者、今回は青春グラフィティとしてこの作品を執筆しているのですが…それに固執しすぎて、物語の肝である謎部分の扱いがかなりおろそかになってるような気がしました。SAWの正体は、途中から丸わかりな感じになってるし、肝心のトリック解明シーンも、2ページぐらいで終わっちゃってるし。
そして、自分がどうしても不満に感じるのは、やはり盛り上がりが少ない点です。全編を通して事件が起こり続け、で、七不思議を追い求める人間が、探り合いの真似事をしたり、推理っぽいことをしたり。で、最終的に事件の解決はおざなりで、話自体も、ページの都合で急いでまとめたような感がぬぐえません。はっきり言って、ぬるいです。後半は逆ギレキャラと化した秋月のキャラクタ設定は笑えるし、終盤に「え、お前が!?」みたいな展開もあることはあるんですが…。青春グラフィティと呼ぶには、登場人物の関係の変化が少なすぎるのではないかと。自分には単に事件と人間の動きを綴っただけの小説に思えました。
『七不思議を管理する団体』という設定自体は非常に面白く、巧くやればかなり魅力的な青春ミステリになりそうな気もするだけに、残念です。設定を巧く転がせていないと思いました。タイトルとあらすじに惹かれて読んだのに…ちょっぴりがっかりです。
あと、気になったんですが、この方って、森博嗣さんの影響を受けてますよね*1。特徴的な外来語表記、起伏の少ない淡々とした文章、英語の副題に、あとがきの語り口調まで、非常に良く似ています。自分はあまり森作品を熱心に読んでいるわけではないので、大きいことは言えませんが…ここまで露骨に森博嗣さんをリスペクトするのなら、相当なモノを書いてこないと、読者からの風当たりは厳しいと思いますよ
とりあえず、この作品、『七不思議の壊し方』というタイトルで続刊が出ているので、そちらの方も読んでみたいと思います。タイトルに冠してるくらいだから、派手にぶっ壊してくれるといいんですが…さて。

*1:第一作のあとがきで言及しておられるそうで。