『“不思議”取り扱います 付喪堂骨董店』 御堂彰彦

付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

付喪堂骨董店―“不思議”取り扱います (電撃文庫)

『アンティーク』は人が思ってる以上に、身近に存在している。
それがもたらすのが、幸運か不幸かは手にした人間次第だ。

アンティーク。それは、幸運を呼ぶ石などに代表される、不可思議な力の宿った骨董品たち。
そんないわくつきの器物を取り扱うのが、町の片隅にたたずむ骨董品屋『付喪堂骨董店〜FAKE〜』。
だが、店の名前のせいなのか、そこに陳列されている『アンティーク』は大概ニセモノ。更に、胡散臭い店の外観と、仏頂面な少女のそっけいない対応も相まって、常に経営は火の車という吹けば飛ぶような店なのだ。
だけど、ごくたまに本当に本物の『アンティーク』が舞い込むこともあって…。
これは、そんな本物の『アンティーク』を手に入れてしまった、奇縁な人々の物語。


不思議な能力を持つ骨董品にまつわる連作短編集。
骨董店で働く2人の少年少女・来栖拓也と舞野咲が、『アンティーク』に関わってしまった人々の依頼に答え、狂言回しのように参加していく、というのがストーリーの基本形になります。使いようによって正でも負でもどちらの方向にも転がりきってしまえる『アンティーク』を軸に、ミステリアスで寓話的な物語が展開されていきます。
以下、それぞれの感想!

偶然

自分の願ったことを『偶然』実現させてしまえる『アンティーク』の物語。この一編で、この話の基本的な形を把握できると思います。この分量でミステリ的な仕掛けをも見事に成功させていますが、故に少々詰め込みすぎの感もあったかも…。バトルシーンまでありますからね。最初からけっこう重苦しい感じの話。

かつて人々を病から救ったという、呪われた像の物語。この話では、数百年前の最初の持ち主のエピソードと、今現在、像の影響で病魔に侵されてしまった咲を救おうとする来栖のエピソード、2つのストーリーが交互に描かれていきます。物語の要は、何故病を治す像が、いつしか触れたものを死においやる像へと変化してしまったのか?…しかし、このトリックはけっこう強引だったかもなぁ…。アンティークの特殊性があるから許されるような感じ。

記憶と記録

書くとその内容をすべて記憶できるノートの物語。どんでん返しもよく出来てて、純粋にお話の完成度で競うならこれが一番だと思います。これまで特殊な少年っぽいオーラを放っていた来栖が、やけに普通じみた一面を見せてくれるのもこの話。あと、肝心のアンティークが、青いあんちくしょうの某アン●パンともろに被るのは俺だけですか*1

プレゼント

なんでもない日に、何故か来栖が咲にプレゼントを贈る。思いもかけない行動に、咲はがらにもなく動揺して…。
それまで、仏頂面な少女、という第三者的立場を崩さなかった咲が、妙に暴走する回。ほぼ、彼女からの視点で物語が語られるのですが…。彼女の意外な女の子っぽさに驚き、そして終始にやにやしっぱなしでした。ぶっちゃけ、評価を星4つにしたのは、このエピソードが理由といっても過言ではありません(爆)。…つーかもう、お前ら普通にラヴラヴだよ!ラストにあえて、こんなキャラ萌え話を持ってくるなんて…やりやがるぜ御堂彰彦


淡々とした小説なので、毎日の休憩時間にコーヒー啜りつつ、ほろ苦気分でちびちび読んでいくといいんじゃねーの?とか思いました(超適当)。近々新刊も出るようですし、マイペースにシリーズ追っていこうと思います。2人の進展も気になるしね!

*1:でも、こっちのほうが使い勝手よさそう。