『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん4 絆の支柱は欲望』 入間人間


「「人畜無害以外の、何か」」

三月三十一日、マユが破綻した。
四月一日、『僕』はすべての元凶・かの誘拐犯が住んでいた邸宅へと足を運ぶ。増改築を繰り返し、さながら洋館のような風貌になったかつての因縁の場所。今現在、そこは『大江家』なる家族らの所有物になっていた。
哀れな父親。悪趣味な母親。従順な長男。影法師の長女。逆さな次女。歪んだ三女。そして2人の使用人。
確実に壊れかけた家族たちに臆することもなく、黙々と『僕』は屋敷の中を探索する。マユをまーちゃんに戻す鍵を見つけるために。
しかし、一晩がたち、屋敷の中を異常な空気が包み始める。切断された電話線、電子ロックが狂ったドア、水の中に沈む携帯。…どうやらありていに言って、僕らは大江一家と共に広大な屋敷の中に閉じ込められてしまったらしい。僕ら?…そう、今回はなぜか伏見も一緒についてきてるのだった。で、当の伏見は、庭に倒れている血みどろ死体を見て以来、ずっと震えている、と。
…『僕』はこのクローズド・サークルから抜け出し、愛しのまーちゃんの元へと帰り着くことは出来るのだろか。


『みーまー』シリーズの4作目。初の長篇続き物です。
2巻と同じく、ミステリテイストの強い話。密室の中での殺人事件、といったら推理小説の黄金パターンとも言える展開ですが、ひねくれ嘘つきみーくんなだけに、そうやすやすとは話は進みません。隙があれば嘘をつくので、何を考えてるのかわかりづらいし。銃声や悲鳴が聞こえても、あせらず急がずのんびり風呂に浸かっているという外道っぷり。それでも物語の終盤、ようやく犯人に目星をつけている的なことをほのめかすのだけど、そこへ……!というところで前半戦終了。5巻に直接話が続いているので、全体的な感想は来月ということになりそうです。
今回、まーちゃんは冒頭で壊れてしまっているので、ほとんど出番がありません。メインヒロインがいなくなって寂しいような(妙に安心なような)。その代わり、電波な電波部長・伏見柚々嬢が再登場。メモ帳を消し消ししつつ、ここぞとばかりにみーくんラヴっぷりを見せ付けてきます。自分はゆゆさんが妙に気に入ってたので、大満足。ゆゆさん成分をしっとり補完できました。
あとは、新登場キャラたちも負けず劣らず電波な人たちが盛り沢山。個人的にツボだったのは、長女・湯女さんと次女・茜ちゃん。この2人はぜひ生き残って、今後のシリーズにも顔を見せてほしいと思うのですが…。厳しいだろうなぁ。
あと、今回の章タイトルは、どうも既存の推理小説(クローズド・サークルモノ?)が元ネタのようなのですが、知識不足な自分ではほとんどが判断不能。調べてみたところ、どうやら次のようになっているようです。

タイトル   元ネタ 備考
一章 きせいちゅうの殺人 寄生虫館の殺人』? 倉知淳著。短篇作品で、1994年刊行の『日曜の夜は出たくない』に収録。『〜の殺人』というタイトルのミステリは星の数ほどあるので、本当にこれが元ネタなのかは不明。
二章 ナイフに死す 『ナイルに死す』 アガサ・クリスティー著。ポアロシリーズ。1937年刊行。
三章、日没 冷たい死体の時は止まる 『冷たい校舎の時は止まる』 辻村深月著。第31回メフィスト賞受賞作で、氏のデビュー作。2004年刊行。これはさすがにわかりました。
三章、暗中 殺意の拡散する夜 『殺意の集う夜』 西澤保彦著。1996年刊行。


クローズド・サークルモノという以外は出版時期も系統もバラバラで、統一性はあまりありません。次巻もこの規則に則った章タイトルになるのでしょーか。『クビキリサイクル』とか、入るといいなぁ。