『傷物語』 西尾維新

傷物語 (講談社BOX)

傷物語 (講談社BOX)

「この物語はバッドエンドだ。みんなが不幸になることで終わりを迎える」

キスショット・アセロラオリオン・ハートアンダーブレードのことを、そろそろ語らなくてはいけない頃だと思う。僕にはきっと、その義務がある。高校二年生から高校三年生の狭間である春休み――僕は彼女に出会った。それは衝撃的な出会いであったし、また壊滅的な出会いでもあった。いずれにしても、僕は運が悪かったのだと思う――。
阿良々木暦が、初めて怪異と『出遭った』ときの物語。人気シリーズ『化物語』の前日譚。


講談社BOXマガジン『パンドラ vol.1 SIDE-A』の巻頭一挙掲載、西尾維新の書き下ろし長編。
化物語』の前日譚というわけですが……べつに『化物語』自体を読んでいなくても、問題はないでしょう。『第一話 ひたぎクラブ』の最初の仕掛けが機能しなくなりはしますが。最初の驚きを失いたくないという人は『バケモノ』から入ったほうがいいかもしれません。…まあこのタイトルですでにネタバレしているようなもんだけど。
単刀直入に言って、面白かったです。
『バケモノ』の頃よりすこしヒネた、やっぱり年相応にエロい暦は楽しいし。暦が言うところの『学園異能バトル』は魅せるし。で、やっぱり会話が面白い。暦と羽川の倉庫内での会話なんかすげえって思った*1。キスショットさんもお茶目で可愛かったし。うんうん、楽しかった。
…が、楽しかったがゆえに、少し不満も残りました。
まず、会話成分が少ない。全体的にバトルやシリアスが多めで、このシリーズの最大の特徴である『小説でしかできない漫才会話』は『バケモノ』に比べて随分控え気味に思えました。その割にボリュームは300ページ弱。多い。『バケモノ』のときみたいに、10ページぐらい無駄に面白い会話を展開させて欲しかった。『バケモノ下巻』『つばさキャット』の会話量はハンパないのに…。
そして、登場人物が…キャラが…少ない。
いや、前日譚だから、『バケモノ』に登場したキャラが出てこないのはわかってるんですけど!わかってるんですけど、この後に控えている面白女の子たちがこれっぽちも登場しないのはやっぱり寂しかった。ひたぎや真宵の会話が読みてー。特に撫子は下巻で初登場し、出番も少なかっただけにとても惜しい。西尾さん、後日譚は書いてくれないのかなぁ……。
と、まぁ後半は生意気にもダメだしばっかしてますが、それでも星4つ、読んで損なしの面白さです。BOX化後でも良いので、ゼヒ手にとって見てください。おすすめ。

*1:どういうシチュエーションなのかは読んでのお楽しみ