『世界の中心、針山さん』 成田良悟

「それは……ちょっと違うんじゃないですか?」

埼玉県所沢市。この地を舞台に、数々の物語が繰り広げられる。
ひとつは『都市伝説』の物語。ベッドの下の暗がりに潜む、異形の存在の物語。
ひとつは『魔女っ娘』の物語。『魔法の国』から落ちてきた、不思議な魔法少女の物語。
ひとつは『デンセツノユウシャ』の物語。『闇』を払うために戦う、哀れな勇者たちの物語。
ひとつは、ひとつは、ひとつは――。
そしてこれらの『物語』に、必ず現れる一人の人間がいる。
彼の名前は針山真吉。37歳、妻子あり。職業グラフィックデザイナー。眼鏡をかけた憎めない風貌の男。
これといって何の能力も無い、まったくの普通の人間であるハズの針山さん。しかし彼は、数々の現実離れした事件に必ず脇役として“偶然にも”関わってしまう。
そう――まるで、彼こそが世界の中心であるかのごとく。
連作短編シリーズ第1弾。

以前、あまり面白くないという意見を耳にしていたので、あんまり期待せずに読み始めたのですが、いやいや、まったくの杞憂に終わりました!文句なしの星5つじゃーい!
それぞれの短編は電撃hpに掲載されたのが初出で、最後に収録されている『奇跡の中心、針山さん』のみ書き下ろし。確かに、それぞれの短編を個々に読むと、他の成田作品に比べ幾分かパワーダウンした印象が否めませんでしたが、それら全てが、ラストの『奇跡の中心、針山さん』で統合され、収束されていく展開はまさに見事の一言。清々しい読後感を得ることが出来ました。雑誌掲載を追いかけるより、単行本化まで待ったほうが断然楽しめると思います。イラストのタッグも豪華としか言いようが無いですね。オススメ。
個人的には、口絵の話も詳しく書いて欲しいですね。