第3回 秘密屋 白

「聞きましたよ。あなたが秘密屋なんでしょ?」
21世紀開幕早々に僕にかかってきた間違い電話。
その男は前世紀、僕が追い求めていた謎の存在「秘密屋」の正体を知っていた…。
1vs1。
「秘密屋」の真実をかけ、電話の男と僕の薄皮一枚の心理戦が繰り広げられる。
それから数日後。
とあるホテルに呼び出された僕を待っていたのは本物の「秘密屋」。
ついに姿を現した“彼”は僕に意外な要求をする。
「今こそすべてを話そう。俺の本を書け」
あの(マジで)超大物政治家を標的にした戦慄の計画とは!?
秘密に触れすぎた男が地獄へと落ちるさまを描いた、「秘密屋」白本。

(前回から続き)
そう、コレ。Gen9が最も好きな流水大説、それはこの「秘密屋 白」です。
……と、言えばおそらく流水読者の方々は少し意外に思われるかもしれません。
でも
Gen9はこの作品がとにかく大好きなんです。
僕と電話の男の駆け引きもたまらなく楽しい。
レイアウト・ショウ*1も限りなく美しい。
そして、僕と「秘密屋」の談話!
あー
いいなぁいいなぁ。
Gen9は、こーゆう裏社会の人に主人公が認められたり、裏社会の人が進んで主人公に手を貸してくれる、というストーリーが大好きなんです。ドラマとかでもよくあるじゃないですか。気の強い主人公がヤクザに一目置かれて、最終回あたりで力を貸してくれるとか。
アウトローに認められる、というシチュエーションがイイのかもしれません

それに
企画意図もすばらしい。
この作品は清涼院流水21世紀開幕記念作品としてもう一冊の「秘密屋」赤本と共に同時出版されました。
ストーリー以外にも、様々な記念的な趣向が盛り込まれています。
たとえば、この「秘密屋」赤白は清涼院流水の20・21冊目の著作となります。
20〜21世紀の連続を彷彿とさせますね。
それに、価格。
この作品は「秘密屋 赤」と同じく500円(税別)で販売されました。
通常、講談社ノベルスはどんなに薄くしてもせいぜい700円台で、500円なんて破格の値段は普通はありえません。
これは流水氏のたっての願いで、薄い本を2冊出すなら、値段も安くしてお得感をだしたい、ということでした。
その500円ノベルスを実現するために、彼は自身の印税丸ごとカットまで申し出たそうです。
実際は、編集者の方が裏技を駆使して、印税は少しカットされただけで済んだそうですが。
自身の儲けをなくしてまで、読者にサービスしようという作家が果たしてどれだけいるでしょうか?
このエピソードを知ったとき、Gen9はこの清涼院流水という作家の底知れなさを改めて実感しました。
ゆえに
Gen9の一番のお気に入りはこの「秘密屋 白」というわけ、なんです。
お気に入りゆえに、考察しようにもスキとしか言いようがありません!Gen9の中で、紛れもなく最高傑作はこの「秘密屋 白」です!
ページ数も少なく、簡単に読み終えられるので流水大説ビギナーにもオススメです。
500円でお買い得。作家と編集者が身を削って実現したこの値段。ぜひとも皆さんお買い求めください。
さて
次回はもうひとつの「秘密屋」を。
今度は少し辛口めに考察しようと思います。*2
ご注意ください。

*1:流水大説における技法。字の数を故意に揃えたり起伏をつけることで、文章の見た目の並び自体を美しく見せるテクニック。読んでみるとわかりますが、きれいに文章が並んでます。詳しくはそのうち……

*2:酷評すると言うわけではありませんが