『人類は衰退しました5』 田中ロミオ

人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)

人類は衰退しました 5 (ガガガ文庫)

「せんきゃくばんらいですからー」

わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は"妖精さん"のものだったりします。
"妖精さん"たちが旅行に出かけ、唐突に静かになってしまった『わたし』の周囲。寂しくなってしまったのか、なんだか昔のことばかり思い出されます。学舎での日々。友人Yとの出会い。生活支援ロボットRYOBO230r。秘密の倶楽部・のばら会。そんな風に回想を続けるうち、私は忘れていたあることを思い出します…。妖精さんの、ひみつのおちゃかい
「じむしょの ほうそくが みだれる!」 くすのきのさと で いえが きえていく ふかかいな じけんが おこりました。いったい どういう ことでしょう。くうちゅうの コマンドウインドウ を ひらいて・・ ああ また せんたくを まちがえて しまった! そんななか さとに なぞの しんりゃくしゃが あらわれる! 「タダチニ ソウビ シタマエ!」 ぶきを てにした 『わたし』たちは かれらの アジトへと むかいます・・妖精さんの、いちにちいちじかん


お久しぶりの最新刊です。一年ぶりらしいのですが、あんまり久しぶりな感じがしないのは何故なのでしょう。構成はいつも通りの短編二本。信頼と安心のクニクニ感を楽しめした。
前半は主人公さんの過去話。今より『わたし』がもっと意地っ張りで、もっと人見知りだった頃。彼女の対人処方から始まる学舎での生活は、あまりにも陰鬱すぎて途中読み進めるのが辛かったのですが、最後の最後には涙ぐんでしまいました。私たちは子供の頃の一人だけの世界を徐々に無くし、それと引き替えに孤独でなくなり、色んな人と同じ時間を過ごせるようになっていきます。そこには、ひょっとしたら、こういう理由があるのかも…しれませんね。
対して後半では、前半のリバウンドがかかってるのか、妖精さんぱぅわー全開。世界レベルで彼らがそのメチャクチャっぷりを遺憾なく発揮してくれます。あるあるネタが、一般人プレイヤーとしてのそれじゃなくて、ちょっと制作者側に突っ込んだ感じなのが面白かったです。さすがはロミオさん。ゲームの愛と風刺に満ちた、濃度高めのお時間を過ごせました。そういえばDSクロノまだクリアしてなかったな…再開しようかしら…。