『とらドラ・スピンオフ2! 虎、肥ゆる秋』 竹宮ゆゆこ

とらドラ・スピンオフ2! 虎、肥ゆる秋 (電撃文庫)

とらドラ・スピンオフ2! 虎、肥ゆる秋 (電撃文庫)

「甘え、てんじゃ、ねぇぇぇぇええええええぇぇぇぇ――――っ!」

秋だもの。美味しいモノがいっぱいだもの。かくして虎は太った。己の食事管理に不備があったことに衝撃を受ける竜児は、大河を痩せさせるため、おなじみの面々に知恵を求めるが…? 『虎、肥ゆる秋』
竜児の親友にしてヤバイほどなアホ野郎・春田浩次。彼の理想の女子との出会いは『川で溺れているところを颯爽と助けて人工呼吸、そのまま彼女の部屋へ、その後は……フヒヒ!』。そんなネジの飛びまくった妄想があろうことか現実のモノに…? 『春になったら群馬に行こう!』
夏休み終了まであと少し。楽しかった思い出を胸に抱きつつ、新学期から何かしら己をイメチェンできないものかと、色々と模索してみる高須竜児(17)。だが、夏休み最後のイベント・チーム毘沙門天とのバーベキュー大会で悲劇が訪れる…! 『THE END OF 夏休み』
せっせと手入れした買いがあって、遂に立派な実りを迎えた高須農場のサツマイモ共(in 学校の花壇)。実乃梨との芋掘りも約束し、ウキウキ気分な竜児だったが、収穫を前に超弩級の台風が日本に襲来し…。 『秋がきたから畑に行こう!』
自ら『失恋大明神』を名乗り、『あなたの恋の応援団』企画を発足させた新生徒会長・北村祐作。その第一回のゲストとして、執拗な勧誘を受けている担任教諭・恋ヶ窪ゆり。懸命に断り続ける彼女だったが、大真面目な彼の熱意に負けたか、静かに自らの『人生のドツボ』を語り始める。それはまだ、彼女が『独身(30)』ではなく、『彼氏持ち(22)』だった遙かな昔…。 『先生のおきにいり』
電撃文庫MAGAZINEの掲載作をまとめた短編集。これぞとらドラ・スピンオフ!


スピンオフシリーズ第二弾。前作は一本の長編が丸々入ったモノでしたが、今作のスピンオフは短編集。おなじみの面々のコミカルなエピソード、あるいは本編ではスポットの当てられることのないキャラクタの恋模様を詰め込んだ。バラエティ豊かな内容に仕上がっています。
最新刊では不穏絶好調で、コメディ部分や作者のあとがきでさえも笑ける余裕がなくなっていますが…今作に収録されている短篇は夏〜秋の時期を中心としているだけあって、大河たちの関係もまだまだ平和なもの。本編とは直接の関わりのない『変わらない日常』を存分に楽しむことが出来ました。ふと現在の状況を思い出して、時々辛くなっちゃたりもしましたけどね…。
以下、それぞれの感想。

虎、肥ゆる秋

サブタイトルにもなっている巻頭作品。食い物の描写、そして喰いまくるタイガーの可愛さがはんぱない…。

春になったら群馬に行こう!

アホの春田の話。何というか、頭悪いことを自覚しつつ、色々と考えることは考えてるんだなぁ、と胸が熱くなりました。こういうお調子者キャラって、いつでも笑ってる賑やかし者ってイメージが強いんですが、いや春田もそうには違いないんですが…。単純なりに、覚悟や悲哀だってありますよね。かっこいいぜ、春田。

THE END OF 夏休み

夏休み最後の悲劇。内容もさることながら、ヤスさんのラストのイラストが素晴らしすぎるw

秋がきたから畑に行こう!

畑危機一髪。どうでもいいですが、激しい雨が降る中、家の中であったかくしながら静かに過ごすのって落ち着きますよね。大河と竜児の夕餉風景を見ながら、そんな心地よさを思い出しましたです。はい。

先生のお気に入り

独身。本編の青春とは明らかに違う、打算的でやっぱり苦い、そんな恋模様が描かれます。たけゆゆ、こんなのも書けるんだ…ていうかこれこそが彼女の真骨頂なのかもしれない…。短篇だったので少々控えめでしたが、長編一本でこんな感じの内容を書いたら、相当な傑作になりそうな予感がぷんぷんします。…やっぱし、いつの日か一般文芸に進出して欲しいなー…。