『とらドラ・スピンオフ! 幸福の桜色トルネード』 竹宮ゆゆこ

舞え。
降り注げ。

生まれてこの方、あらゆる不幸を背負い込み続け、いつのまにやら『不幸体質』と呼ばれるようになってしまった、生徒会庶務・富家幸太。今日も今日とて、死神の影にため息をつく彼だったが、ひょんな事故がきっかけで、可愛らしい女の子・狩野さくらと衝撃的な出会いを果たす。
明るくて天真爛漫な彼女に、全力で一目惚れしてしまう幸太。だが彼女は、全校生徒の兄貴分にして我らが生徒会長・狩野すみれの実の妹であり、凛としたマイボスとは似ても似つかない、天然色香ほややん娘だったりするわけで―。
そして、すみれの鶴の一声で、少々オツムの弱いさくらの追試対策の面倒をみることになってしまう幸太。我知らず撒き散らされるピンク一色の空気に抗いつつ、幸せに不慣れな男は、初めての幸福を掴むことができるのか?
大河と竜児の知らぬところで繰り広げられた、一つの恋の物語。これぞ幸福の桜色トルネード!


第二巻収録の短篇でも顔を見せた、不幸の黒猫男・富家幸太君はじめ、生徒会メンバーを中心にした番外編。
本編主人公である大河と竜児は脇役ポジションであるばかりか、ラストの方ではちょっとした悪役になりさがってたりして…w まぁ気の毒と言えば気の毒ですが、ちょっと「ざまぁw」っと思ったのも事実だったり。仕方ないねw
で、この本の感想ですがー…ぶっちゃけた話、一言「ニヨニヨ」ってだけで済ませてしまえますねー。本編では、読んでてぐがああぁぁぁぁぁぁ!!って叫びたくなるような、複雑怪奇な恋模様が描かれている『とらドラ!』ですが、こちらのスピンオフでは、もうピンクの嵐が満載。良い意味で単純明快な恋風が、これでもかとばかりに詰め込まれています。なんつーかもう、最初から最後まで顔がにやけっぱなしで…w 最終章『F12』の富家の頑張りなんか、王道なのにも関わらず目頭熱くなったりして…。あーちくしょう、どストレートなのに、なんでこんなに面白いんだ。
また、幸太&さくらのカップルもさることながら、今作では北村とすみれの、それぞれの感情の移り変わりもさりげなく描かれています。6巻で爆発することになる、二人の燻った本音と本音。先にその顛末を知っていると、北村の幸太への応援が切なくて切なくて…。自分は6巻のすみれの激昂に面食らってしまっていた口だったので、今作で彼女のこともより深く知ることが出来、見えていなかった部分を補完することもできました。
大河達とは対照的な、「好き!」を惜しげもなく相手にぶつけた、溢れんばかりの恋模様。こんな感じで、ニヨニヨ楽しませてもらいました。
大河たちも願わくば、かの二人のような幸せな結末を迎えられますように…(必死)。