『下克上ボックス パンドラvol.2 SIDE-B』

パンドラ Vol.2 SIDE-B (講談社BOX)

パンドラ Vol.2 SIDE-B (講談社BOX)

下克上ボックス。それは、若く野心に満ちた作家たちにとって、既存の作家から読者を奪うチャンス。たとえそれが、身の程知らずの"挑戦"だったとしても─。


と言うわけで真っ先に読みましたよ!下克上ボックス!
今回は小説作品が多めで、本読みとしては嬉しい限り。今回も、全部まとめてひとっくくりの、ワンランク下な扱いで気合い入れて書いていきたいと思います。
あ、それと小仙波さん、ボックス脱出&単行本発売決定、まことにおめでとうございます!
よし、んじゃ行くぞ〜!

Present 優

初めて読んだときは、一体どちらか読み進めればいいのかわからなくなってしまいました。ずっとずっとループしながら続いていき、そのたびにふんわりとしたスポンジケーキを頬張っているような*1、優しい気持ちに包まれます。良い作品です。白黒なのが、逆にこの絵物語の良さを引き立てている気がします。

ganzi

ワケあって、最初の時点ではタイトルが伏せられている小説作品。しっとりとした語り口が良い感じ。途中、いきなりのトンデモ展開があって、「えっと…」となってしまうのですが、それすらも文章を読む内になだめられ、心地よいしっとり感のまま話が終わっていきます。なんだろう、座談会でも言われていますが、確かに不思議な作品です。N崎さんの言うとおり、これ、というテーマがぴったりと決まれば、傑作が生まれそうな気がぷんぷんします。今後に期待。

ゴーストスクール 森川智善

うーん、ちょっと厳しく書くと、これはそんなに面白くなかったなぁ…。名探偵の幽霊と対決する、というミステリなのですが、作品世界における幽霊のルール説明の割合が多すぎて、とても読みづらかったです。お互いが名探偵を名乗れるほどの能力を有しているかが、短編の中で語り切れていないがゆえに、「名探偵vs幽霊名探偵」という構図も、そんなに魅力的に感じませんでした。詰め込みすぎてて、消化不良で…。第一部、第二部の頭の既存作品からの引用に、釣り合う内容になっているとは、到底思いませんでした。イラストはすっごく良かっただけに、ちょっと残念。分量がたっぷりある長編作品だったら、面白くなるかな〜。

ユトの色 斎まや

あーもうこの人好き。ストーリーテリングの力はぴかいちですね。大きく出てくれなくてもいいから、いつもパンドラのどこかで静かに描いててほしいな。

感性ドリフト/偽善アンドロステノン 上城健太

やっべえ、これ面白い!ニオイを主軸にした小説、というのがまず斬新だし、お話もしっかりした青春ミステリで、安心して読むことが出来ました。なにより、読後感が爽やかで実に良い!ニオイを嗅いだときの主人公の変態なトリップっぷり、更にそれを演出するフォントも、良い感じでしたw これは普通に続きが読みたくなるなぁ。というか長編が読みたい。いやーまったく無名の人で、一読してこれほど入れ込んだのは粒崎さん以来かもしらん。出して出して、BOXで出して!!

Fade Out Syndrome N村

途中までおごそかな気持ちで読んでいたのですが、最後のコマと柱の文章の組み合わせに、思わず吹き出してしまいました。たぶん笑うところじゃないんだろうけど…w いや、座談会で「ギャグ漫画」って話があったから、この反応で正しいのか…?w とにかく、色んな意味で前回よりN村さんの株が上がりまくりましたw 確かにこのイっちゃった感性はユヤタンに通じるものがあるかもなー。

解人待メモワール 円居挽

前回の盗人待と対をなす短編。盗人待は、個性豊かなキャラたちがあちゃこちゃ引っかき回す痛快なミステリでしたが、今作は二人の対話で大半が構成される、冷たい印象の本格ミステリ。二転三転する展開、次第に暴かれる犯人の異常心理、普通に読み応えのある作品でした。短い分量の中に、しっかり書くべきものだけを書いて、きっちり落とし込んでいるように思います。『盗人待』『解人待』、二つの面を持つという長編『丸太町ルヴォワール』、ぜひに読んでみたいものです。



と言うわけで、実際に投票する方ですが、これはもうぶっちぎりで上城さんです!この人は普通に優秀賞取ってても良かったと思うなー個人的には。短編だけと言わず、ぜひ単行本で長編を読んでみたい。斬新でかつ優良な青春ミステリでした。大プッシュするぞ、俺は!!

*1:自分だとキモイな、この表現