『ミラクルチロル44キロ Aパート・チロルアレンジ』 木村航

あなたのいのちを、ほんのちょっぴり分けてください。

「いのちの募金にご協力ください」
そう書かれたビラを配りつつ、山のように積まれたチロルチョコを抱えて、日々『いのちの募金』を集める青年・田丸くん。そんな彼に、間違って『一生』分の募金をしてしまった中学生・つぼみは、成り行きで募金活動を手伝う内、彼に対して恋心を抱くようになる。しかし、彼の目的は、募金されたいのちで、死んでしまった恋人を蘇らせることだった。
田丸くんを支援するあやしげな団体・間島総研のメフィスとフェレス、毎日一秒ずつ募金してはチョコを頬張る男の子・小太郎、そしてつぼみに協力すると嘯くおかしなサブカル風男・箕ノ上さん。
冷たい一個のチロルチョコを巡って巻き起こる、ほんのりビターなラブストーリー。


表紙のキュートさに打ちのめされて、購入。これほど完璧なジャケ買いもそうあるまい。
というわけで、『ミラクルチロル44キロ』。まずは前半となるAパートです。
話は完全にBパート(一月末刊行予定)へと続いてしまっているので、詳しい感想はそちらを読んでから、ということになるでしょうが、一言申し上げておくと、あらすじの『キュートでホットで、ちょっとミラクルな恋物語』で、可愛くてあまーい感じのお話を想像しているのなら、ちょっと手に取るのを考えた方がいいかと思われます。
この話は、苦い、です。通常のライトノベルからすると、可愛いけど少し浮いた感じのイラストで、ひょっとしたら勘づいてる方もいるかもしれませんが…ラノベの平均値からすると、このラブストーリーは、かなり苦めです。主人公の抱えるモノが、重い。読むのなら、ちょいと覚悟してからページをめくり始めることをおすすめします。
しかし、購入してから気づいたんですが、この人、『ぺとぺとさん』シリーズの方なんですね。独特の語り口にストーリーテリングの能力も高く、興味深く読ませてもらいました。『ぺとぺとさん』も、こんな感じの読み応えある話なのかな。読んでみようかしら。