『5656! knight's Strange Night』 成田良悟

「つまる所、彼らは自分の意思で惹かれ合うのサ。本人達ハ、運命なんて言い方で誤魔化そうとするかもしれないけどネ」

戌と狗は『ワンワン』吠える。鏡に映る互いを喰い殺さんとするために。
眠り姫は『スヤスヤ』眠る。夢の中にたくさんのものを詰め込めんで。
島の住人達は『チュウチュウ』騒ぐ。自分らの抱える恋に引きずられながら。
悪人と狂人とが闊歩する廃島『越佐大橋』。連続爆破事件から数ヶ月が経ち、島には穏やかな平和な時間が流れていた。恐喝、殺しに美人局。そして島を騒がせる悪党ばかりを狙う連続殺人。そんな「いつもどおり」の不穏な空気の中、不器用な奴らは今日も非日常を謳歌する…。

越佐大橋シリーズの外伝的短編集。
あんまり平和じゃない平和な日常を描いた一冊ということで、『デュラララ!!×4』のコンセプトに近いモノがあるかも。基本的にお話は全部繋がっているのですが、1,3,5話が直接ストーリーの続く連作短編、2,4話が主人公の異なる、ある程度独立した短編、と少々トリッキーな構成になっています。
急いで終わってしまった感のある越佐大橋シリーズの、個性豊かなキャラクタたちにスポットを当てる内容になっているので、シリーズ本編では見えなかった色んなキャラたちの愛らしさを補完できること請け合い*1。とは言え、この巻で出番が多いのは犬二人組にリーレイくらいのものなのですが、続編として『5656弐(仮)』の執筆も予定しているらしいので、今回涙を飲んだ人々にもチャンスはあるかも?
ひょっとしたら本編よりも面白かったかも知れない…と、そんなことを一瞬考えてしまったりな、そんな感じでした。終わり。
…しかし今回の敵のかませ犬っぷりはハンパじゃなかったな…。最初、あんなに意味ありげなこと喋ってた癖に…。

*1:たぶん一番コレが顕著なのは麗凰