『あたし彼女』 kiki

こんな事

あるんだね


凄すぎるね

自他共に認める美貌を持ちながら、それを良いことに次々に男を乗り換え続ける女の子・アキ。お金とセックスのためだけに男と付き合い、すぐに別れる遊び続けの人生。運命の恋などあるはずないと鼻で笑い、子供が出来ても嘘の泣き顔で慰謝料を余計にふんだくる。そしてそんな中、合コンで出会った金持ちのトモとも、そんな風に数多く付き合ってきた男の一人で終わるはずだった。
けれど、ある夜、ペアのハートのブレスレットを買った、そのときから。
彼と彼女の心の中で、いろんなものが、少しずつ変わり始める。


第三回日本ケータイ小説大賞を受賞した作品。
読んでみました。
結論から言うと、面白かったです。
ひょっとしたら、初めて体験する『ケータイ小説』というジャンルに対する物珍しさによる補正がかかっているかも知れませんが、おそらくささいなものだと思います。
やはり魅力は、主人公の心境の変化でしょうか。最後まで読み終わった後、最初のページをもう一回見ると、本当吃驚しましたもん。こんなに性格悪かったっけ、この娘…みたいな感じで。恋で身も心も変わっていく、という展開はクサいと言うか、ベタというかなんと言うか、まー自分のような人間には見てられないモンですが、何故だかこの小説に関しては、純粋にアキの心境の変化を追っていくことが出来たように思います。途中のツンデレ化もニヨニヨさせられましたが、後半のメロメロっぷりなんか、もう恥ずかしくて火が出そうでした。でも嫌じゃないです。むしろベタ甘は大好物です*1
良くも悪くもネット上で有名となった原因である、単語だけを行ごとに並べたような独特の文体ですが、自分はこれがかなり面白かったです。自分は、小説における『思考』の表現に、こんなんじゃないよなーと昔からなんとなく引っかかりを感じていたのですが、『あたし彼女』のこの文体は自分の不満をそっくり解消するようなピッタリ感でした。そうだよこの感じだよ!人間の思考をトレースすると、きっとこのような文章になるに違いないです。
もちろん、ひねくれ人間である自分なので、純度100%のストーリーの中に、疑念を感じるところもないこともなかったのですが、何故だかいつもそういう引っかかりはすぐに頭から消えて、あっという間に次の文章に引き込まれていくんですよね…。傑作、名作と銘打つことはさすがにいたしませんが、自分の中では、十分面白い小説として名を連ねる価値のある作品だと思いました。
あーでもひとつだけ言わせてもらうとすれば、ラストのトモにはなんらかのフォローが欲しかったかな…。だってさ、あんな非道いこと言っておいて、口では全然謝ってないじゃん!ドクトルサンタもああ諭してたんだから、そもそもの遠因はアキだとしても、トモは全身全霊ジャンピング土下座で謝ってしかるべきだろう!!泥沼だとわかってても、そこだけは譲っちゃいけない!!!アキは自分のせいだからとそれで良いことにしたみたいだけど、俺がアキだったら絶対に許さないね!!!!
…と、最後は少し熱くなってしまいましたが、そんな感じで、概ね面白く読み終えることが出来ました。
…いやしかし、世間には、読んでもいないのに、この作品をネタとして語る人が、少々多すぎるような気がします。


色々言う前に
読めよ
読んでからモノ言えよ
みたいな


ていうか
成田先生の感想見返してたら
あまりにも自分と
シンクロしてて
笑っちゃった
みたいな

*1:キッパリ