『きみとぼくが壊した世界』 西尾維新

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス)

きみとぼくが壊した世界 (講談社ノベルス)

「あー!十八年間生きてきて、一番悲しい!」

シャーロック・ホームズが愛した街・ロンドン。
学園の引きこもり少女・病院坂黒猫とその愛すべき友人・櫃内様刻は学園を離れ、はるばるその地まで観光旅行と洒落込むことになった。四泊五日の、二人きりの旅路。だが、その本来の目的は、とある作家が書いたという『呪いの小説』に関する奇妙な依頼だった…?
そこから始まる、霧の街を舞台に繰り広げられる謎解き合戦。果たして二人は、不可思議な事件を解決し、晴れてロンドン旅行を満喫することが出来るのか?
『世界』シリーズ、番外編でお送りする第3弾。


あれ、これでお終い?というのが正直な最初の感想。
なかなかに陰鬱で、破局的なラストが待ち受けている前作までの作風とは打って変わり、最後までそういうこともなく割と牧歌的に終了する当作品。前作までのような歯ごたえのある本格ミステリを期待していた人には物足りないかもしれませんが*1、一応番外編と銘打ってあるし、まぁありっちゃありなのかなぁ…。いや、事件は過去最高の度合いで乱発するんですけどね。あとがきにも、黒猫と様刻の日常編と書いてあるし*2、キャラクタの魅力だけを、純粋に楽しもうと思って読んだほうが吉かもしれませんね。それなりにハラハラはさせられますけど。最初から最後に至るまで、本シリーズでは語られなかったくろね子さんの意外な一面が炸裂しまくってるので、楽しみな方は*3お楽しみに。
しかし、やや未回収の伏線があることが気になります。具体的に言えば、各章で作為的に必ず登場する五年前という言葉ですが。これは今後のシリーズでのキーワードになってくるんですかね。(勘違いでした。神戸牛さん、ツッコミありがとうございます!)あとは新キャラ・病院坂笛吹の今後の本編への関わり方とか。
それと個人的に気になったのは、弔士くんが晴れてろり先輩と彼氏彼女の関係になってるらしいことか。いや、何しろ記述の仕方がアレなので、本当のところはよくわからないのですが。次作では、再び彼が主人公となるらしいので、そっちの方も期待しておきましょうか。いやしかし、あの二人のそんな光景なんて、まったく想像できんな…。

*1:事実、自分もちょっとそんな感じ

*2:正確には違うわけですが

*3:無論、楽しみにしてない人などいないでしょうが