『"文学少女"と穢名の天使』 野村美月

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

“文学少女”と穢名の天使 (ファミ通文庫)

クリスチーヌは、逝ってしまった!
クリスチーヌは、逝ってしまった!
クリスチーヌは、逝ってしまった!

本は好きだけど、成績は悪い"文学少女"天野遠子が、受験に集中するためまさかの休部宣言を発令。遅すぎる努力に呆れつつも、彼女の不在にどことなく寂しさを覚えてしまう井上心葉。しかし、マイペースな音楽教師・鞠谷とであったり、彼の手伝いが元で琴吹ななせと放課後を過ごすことになったり。文芸部で過ごすのとは一味違う、平和的な日々が過ぎていくのだが…。
聖夜も近づく街で、突然姿を消す一人の歌姫。親友であった彼女の身を案じ、心葉と共に夜の街を探し回るななせ。彼女がメールで語っていた「天使」とは、仮面に醜い顔を隠した恐ろしいファントムなのか…?


ここに来て、ななせの魅力が炸裂しまくる第4巻。可愛いよななせ可愛いよ。
今回は特に読み応えがあって、開いてから閉じるまでが本当にあっという間でした。きっちり青春もミステリもしていて、純粋にそれだけで見るなら今までで一番の完成度だったのではないでしょうか?心葉とななせのやり取りにはにやにやするし、後半の展開には驚かされるしで…。単純に、元ネタである『オペラ座の怪人』が自分が大好きな作品ということもあるでしょうが、"文学少女"では今のところこれが一番お気に入りです。
今回語られるのは、才能の話。世の中にはいろんな人がいて、「才能が手に入るなら死んでもいい」という人がいれば、「才能なんか死んでもいらない」という人まで様々です。この辺の悩みは、少しでも才能の欠片がないと理解できない話であって、野村さんもどちらかの悩み(ひょっとしたら両方?)に苦しんでいたのかも…と読み終えて考えたりしました。けれど、こうして小説を書き続けてくれているということは、最後の遠子さんが語りかけたような、結論に達することが出来たのかもしれませんね。いや、ま、何の悩みもなく楽しく本を書いてきてる可能性もなきにしもあらずなのですけれど!*1
そして今回もちらつく黒幕の影。次巻で遂に登場となるわけですが、シリーズに連なる謎が明かされるようですし、今からかなり期待してます。
あと、今回は前半部分やけに不安だったなぁ…。遠子さん不在なのが、これほどまでに心細いものだったとは…。

*1:ちなみに自分は、才能が欲しい・いらないではなく、自分に才能があるのか・ないのか、というみみっちいところで悩んだりしてますYO!