『"文学少女"と繋がれた愚者』 野村美月

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

“文学少女”と繋がれた愚者 (ファミ通文庫)

お母さん、俺はすでに狂っています。

文化祭の日も近づく秋のこと。"文学少女"天野遠子が図書館から借りてきた本が、何者かの手によって切り取られていた。憤慨する彼女は、いつものごとく心葉を引きつれ、犯人追求のため図書館を訪れる。そこで彼らが目にしたのは、ページが散乱した床の上で佇む心葉の級友・芥川だった。醜い言い訳をすることもなく、自分がやったことを素直に認める芥川。そんな彼に対し遠子は、彼女の企画する文化祭での劇に出ることで許してあげると言い出すのだが…。
劇に参加しながら、級友の知られざる一面を目の当たりにする心葉。とある過去に繋がれてしまった三人の男女。物語を想像する"文学少女"は、彼らの鎖を断ち切ることが出来るのか…?


感想がだいぶ遅くなってしまいました…。シリーズ第3弾です。
今まではちょっと自分に入り込みすぎた感想ばかりだったので、ちょっと技法的なところから見て書いてみます。
今回は今までに登場したキャラクタたちも一堂に会していて、なんとなく総括編のような面持ちのある一作に仕上がっています。単なる愉快なレギュラーメンバではなく、前作までの暗さをきっちり引きずったままの再登場になっているのは、感嘆しました。
今までのシリーズでもいえることなのですが、今作でも伏線のミスディレクションが上手いです。『友情』を元にした男女関係があることを最初に提示しておいて、それをいくつにも重ねて本当のところをわかりにくくしていて…。軽やかに騙されますね。
また、今回からどことなくラスボス(?)の影がちらつき始めます。ちゃんと一つの事件を一冊の中で片付けつつも、しっかり大きな流れも作っていて…ストーリーの運び方が上手いなー。