『ふたかた』 わかつきひかる
- 作者: わかつきひかる,巻田佳春
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2008/05/20
- メディア: 文庫
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「あははっ、はははっ、ははは……あははっ」
桂瑞樹は死んだ。事故死だった。
明るくて誰にも優しかった学園一の美少女の死を受け、悲しみにくれるクラスメイトたち。だが、お葬式から四日後の朝、事件は起こった。
なんと、死んだはずの瑞樹が、そのままの姿でごく普通に登校してきたのである。美少女の復活にパニックに陥る生徒たち。しかし、彼女…いや「彼」の正体、それは瑞樹の霊にとり憑かれた双子の弟・桂高志だったのだ!
死んだ姉を成仏させるために、周りから女装を強要させられる高志。さらに、姉の願いであった、学園の美少女コンテストにも参加することになってしまい…。周りの好奇の目に晒される女装少年となってしまった、高志の貞操の運命やいかに!?
ラノベレーベル「一迅社文庫」の創刊ラインナップのひとつ。わかつきひかるさんの新シリーズです。
端的に言って、めちゃ面白かったです。女性の霊にとり憑かれ、女装するハメになってしまう少年の話、ということでちょうどわかつきさんの別作品『AKUMAで少女』の真逆を行くようなストーリーなのですが*1、個人的には、こっちのほうが好きかもしれない。
『AKUMAで少女』は、男女の魂が入れ替わったことでお互いが感じるリアルな(かつエロい)ギャップをネタにした作品でしたが、この『ふたかた』には一迅社の出版規定もあってか、そのような直接的な表現はだいぶ抑えられています*2。むしろこちらでは登場人物たちのそれぞれの感情や思惑を掘り下げ、純粋にお話を作っているように感じました。
ストーリー自体はまぁ王道なんですが、ところどころに予想を裏切るような展開を細かく入れてあり、最後まで全然飽きることがありません。なにより、キャラクターがみんな生き生きしていて楽しい!『AKUMAで少女』ではエロ描写が多いこともあり、頭から「ジュブナイルポルノの人が書いた小説」という意識が常に離れませんでしたが、この作品はそんなことを一切考えず、純粋にライトノベルとして読んでいくことができました。ていうかページをめくる手が止まりませんでした。
ちょっと甘めの評価ですが、楽しませてくれたし星5つ!のっけから素晴らしい作品に出会えたので、一迅社文庫そのものへの期待も高まりました。続編の刊行も待ち遠しい!次作では、サブキャラの方々の事情も深く掘り下げてくれると嬉しいッス*3。
いや、それにしても……こんなに心の底から王道なラヴコメを楽しめたのって、生まれて初めてかもしれないなぁ…*4。