『工学部・水柿助教授の解脱』 森博嗣

工学部・水柿助教授の解脱

工学部・水柿助教授の解脱

諸君、読みたまえ。
これが小説だ。

まだ続きがあったのか奇跡の帰還を遂げるやいなや子犬ぴょこぴょこみぴょこぴょこ柴犬になるコーギーの怪親馬鹿子馬鹿猪鹿蝶馬鹿にも数々あるけれど壁を越えて這い上がってくる本当の馬鹿には金メダルをなんて馬鹿なことをリフォームのビフォア・アフタで散財へと突き進みますます世間からボイジャしたセレブな二人と一匹いかにして密室に巨大なパスカルを入れたのかという疑問に対して真摯な態度で答える箇条書きこもごも壮大なる宇宙と存在の路傍に夢見る意思のほのかに微小なるやさしずめ花弁に落ちる滴のごとくなりぬ


あらすじが意味不明。
そもそもあらすじなんてない。



まったく知らない人のためにご説明しますと、この作品は、森博嗣さんの一連の連作小説『M(水柿)&S(須磨子)シリーズ』の三作目にして、シリーズ最終作となっております。
『M&Sシリーズ』とは、模型製作が趣味の工学部助教授・水柿君が、ひょんなことからミステリ作家としてデビュー、マイペースな奥様・須磨子さんと共に、不可思議な作家生活を謳歌していく、その変化にとんでるようなとんでないような日常を綴った物語、なのですが…。この『水柿君』、どこからどう見ても、作者の森博嗣さん自身がモデルなんです。
『あくまで小説だから!』という建前でもって、エッセイでも書かないようなヤバイ本音を漏らしたり、普段は絶対書かないようなお茶目なギャグを連発したりと、このシリーズにおいて森さん、常にやりたい放題、暴走MAX状態です。しかも、部分的に脚色も入れてるので、どこからどこまでが真実なのか判断できないという…。数ある森作品のなかでも、最異色作といってよい内容に仕上がっています。
それでも、シリーズの第一巻『日常』は、一応のストーリーが軸となって物語が展開していたのですが……話を重ねるごとに、徐々に適当度がヒートアップ。今回にいたっては第一話から、主となる話がまったく語られないままわき道に逸れに逸れ続け、そのまま終わってしまうという体たらく。これを遊びでもなんでもなく、真面目に仕事として書いてるというのだから、凄いというか何というか…*1。こんなメチャクチャな小説にも関わらず、読んでみると笑えてけっこう面白いってゆーんだから、余計に悔しいって話ですよ、皆さん!*2
第一巻は「作家になる前の水柿君」、第二巻は「作家デビュー〜出版界に揉まれる水柿君」と来て、最終巻である今作は「作家キャリアを順調に積んでいく水柿君」が主題。とは言え、描かれる内容は、「作家活動で儲かったお金を、いかにして消費するか」という水柿夫妻の悩みが全体の三分の二ぐらいを占めてたりして…。普通なら「なんて贅沢な」と怒りの一つも覚えそうなものですが、そんな感情がまったく沸いてこないのは、ひとえに森さんの人徳か、それとも書き方が至って真剣で、自慢な雰囲気が微塵も漂ってないからか…。いやーやっぱり自分は、小説よりこういうエッセイ系のほうが好きだなぁ、森作品は。
今回は最終作と言う事で、ラストにけっこうカタストロってる*3どんでん返しがあったりします。不覚にも、「小説ってなんだろう」「人生ってなんだろう」とか、ちょっと考え込んでしまいました。まぁ、それもたぶん、森さんの手のひらの上で踊らされてるだけなんでしょうけどね!
とりあえず、自分はこのシリーズけっこう楽しめたほうだと思っておりますが、ちょっと他人にはオススメしづらい小説(?)だよなぁ…コレ。森作品が好きで好きでたまらないっ!という上級者な方向けですね。
と、思いました。
終わり。


どうでもいいけど、今回一番笑えた箇所*4




































































































どうだ?君も掃除機で、萌えてみないか。

自分の中の森さんのイメージが…w

*1:褒めています

*2:なんじゃそら

*3:そんな日本語はない

*4:ネタバレになるので一応格納