『ブギーポップ・バウンディング ロスト・メビウス』 上遠野浩平


「いつか、必ずそいつはバウンドして、君の前に戻ってくる」

ブギーポップに復讐する』、その執念に取り憑かれている少年・蒼衣秋良。彼が、少女・織機綺と共に、『牙の跡』と呼ばれる空間に足を踏み入れたとき、異形の事態は幕を開けた。時間が経過せず、脱出することも出来ない異空間。そこで彼らが出会うものは、人の心から現れた爆弾の群れ、生き物のように蠢く巨大な竜巻、そして煉瓦色の肌をした奇妙な少年『ブリック』。延々に続く、メビウスの輪のようなその空間で、多くの事象が絡まり、混迷は複雑を極めていく。
己の迷いに気づけない少年と、迷いの弱さに悩む少女。迷い歩き続ける彼らの前に、ブギーポップは現れるのか…。


今、読書記録を確認してみたところ、『ブギーポップ・スタッカート』を読み終えたのは2006年の6月30日。つまり、このシリーズを読むのは1年と9ヶ月ぶりぐらいみたい。かなり間が空いたせいで、登場人物とか色々忘れ気味で、織機さんとか以前登場したことはわかってるんだけど、はていったい誰だったけ…と頭を傾げながら読んでました。でも、上遠野さんは『一冊一冊で完結している』と言ってるわけだから、シリーズとのつながりを意識するのも見当違いな話…なのか?ということは、今回のGen9のようなまっさらな状態での読み方が一番正しいのかも、とか思ったり。
ところで、ブログで『ブギーポップ』の感想を書くのは初めてなのですが、しかしどうにも語るのが難しい作品だなぁ、と久方ぶりに読んで実感しました。キャラクタを忘れてる云々を抜きにしても、難しい。面白いことはわかってるし、自分にとって相当ツボなシリーズであることはよく知ってるんだけど、さぁどんな感想を持ってんだ話してみろよ、と言われると、なかなか口にすることが出来ません…。
とは言え、書かないと始まらないので、頭のもやもやを手探りでほぐしつつ、なんとか書いてみます。
ものすごくシンプルにロスト・メビウスの話の構成を言うなら、密室空間からの脱出モノと言ったところですかね。
『牙の跡』と呼ばれる、時間からも空間からも隔離された謎めいた場所。その場所に囚われた少年少女のSF冒険小説…ということにでもなるのでしょうか?いや、しかしそんな単純なコトバで表せるはずもなく、色んな人間たちの言葉にしづらい思惑がそれぞれあったりして、で、それがどうしようもなく存在していたり世界の敵になったり…。だめだ、こういうことは評論サイト様なんかにお任せするのが一番。頭の弱い自分が考えることじゃありませんね。
ブギーポップシリーズを読むたび、浮かぶのは『どうしようもない』という感情。読んでてわくわくするし、楽しいし、面白いのは確かなんですけど、読み終わってみると、どれも個々の物語としてはなんだかズレているというか…。終わっているのか終わっていないのか、始まってるのか始まってないのか、考えてもわからなくなって、わからなくなって。で、最終的に浮かんでくるのが『どうしようもない』なぁ、という一種あきらめたかのような感情。何を伝えたいのか、伝えたくないのか。ひとつひとつの物語の存在意義がわからなくなる感じ。
『ロスト・メビウス』は、延々と続く表裏のないモノを描く物語でしたが、読み終わったあと考えてみると、それって、ブギーポップシリーズそのものの象徴のようなモンだよなぁとか。続いてるし続いてないし、終わってるし終わってない。矛盾ばっかり。どうしようもない。でもどうしようもなく面白い小説であるのも事実で…。これからも自分は、『どうしようもねぇなぁ』と思いながら読み続けていくんだろうなぁ。


…みかけだけつくろった、まったく身のない感想でした。勢いで書いたので。ごめんなさい。
あと。
今回の終盤で、ブギーポップシリーズの『終わり』が仄めかされましたね。それこそ延々と続くシリーズだと思っていただけに、物語としての終わりが来ることを考えても…全然実感が沸きません。
あと、始まりの文章が、シリーズ恒例の霧間誠一の著作からの引用でなく、みなもと雫の歌からの引用になっていたのは、何か意味があるのでしょうか*1

*1:次の『インフェルノ』は、また霧間誠一になってたし