自分と全く関係ない人の、死、について。


先日、コミックREXの4月号を読もうとしたときのこと。
ぱらりと、まず一番初めに開いたページに、こんな文章が載っていました。

先日、「ComicREX」にて『彼と彼女の境界線』を連載していただいていました依代智行先生がお亡くなりになりました。
 深い哀惜の意を表すと共に、謹んで故人のご冥福を心よりお祈り致します。

 読者の皆様にご報告申し上げます。

株式会社一迅社

―「コミックZEROSUM」「コミックREX」編集長ブログ 2008.3.9


本来なら、学パラを読むだけで終わっていたはずだったのですが。
帰ってからもそのことが妙に頭に残っていて、この『依代智行』という人のことを、少し調べてみました。




依代さんはそもそもはエロゲの原画をやってた人のようで、幾つかの18禁ゲーム原画家として参加されています。で、2003年辺りから『コミックブレイドMASAMUNE』に読みきりマンガを執筆。漫画家としての活動を始めます。そして、しばらく期間を置いた後、ComicREXに初の連載作品『僕と彼女の境界線』をスタート。しかし、わずか2ヵ月後、第2話が雑誌に掲載された直後に急逝。本当に何の前触れもない突然死だったようで、部屋には途中まで書かれた、第3話のネームがあったそうです。


Gen9は、この人と、本当に何もかかわりがありません。彼の手がけたゲームをプレイしたことも、彼の描いたマンガ作品を読んだこともありません。コミックREXの連載陣に彼がいたことも知りませんでした。もし、自分がたまたまREXの追悼ページをたまたま開かなければ、彼の存在すら知ることなく終わっていたでしょう。


彼がたった2話だけ描いて未完に終わってしまった『彼と彼女の境界線』。
ネットでの評判を全般的に見てみると、お世辞にも上手いとは言えない作品だったようです。
シンプルに言ってしまうのなら、『漫画家としてはまだ未熟』。そういうことのよう。
けれど、彼はまだまだ新人だったのだし。これから伸びてくる可能性もあった。めきめきと成長を読者に見せ付けてくれる可能性もあった。
まあ逆に言えば、そのままずるずると失速する可能性もあったし。不人気で打ち切りになる可能性も、もちろんあったのだけど。
けれど、
それらすべての可能性が、一瞬で消されてしまう、というのは、一体どんな心持だったのでしょうか。


ガキっぽい話になりますが、自分にも恥ずかしながら『夢』というモノがあります。
まー毎日、その『夢』へ突き進むために、頑張ったり挫けたり、舞い上がったり落ち込んだり、正負様々なアクションを起こしているわけですよ。
けれど、それがすべて消えてしまったら?努力や喜びの正も、怠惰や悲しみの負も、すべての積み重ねが消えてしまって、ゼロに戻ってしまったら?そして、もう二度と『夢』へ突き進めないのだとしたら?


人類の歴史上、世に知られることなく道半ばで倒れていった哀れな人々は、数限りなくいることでしょう。そんなことは、自分も昔から知識として、理解しているつもりでした。
でも
私に知られることなく、道半ばで倒れた依代さん。
自分が『世』の側に回っていたことを知ったのは、初めての経験で。そして、本当に道半ばで倒れている人がいるということをリアルに感じたのは、これが初めての経験で。
そして、自分も彼と同じ境遇になる可能性だってあるんだよな…と考えると、いっそう彼の無念さに共感して。


きっと、自分は、これから生きていく先、彼の作品に触れる機会は、おそらくありはしないでしょう。
けれど、それでも自分は、『依代智行』という人間がいたことを。広く世に知られることなく、道半ばで倒れた人間がいたことを、きっと忘れはしないと思います。
彼のように、道半ばで倒れないことを祈り、そして、彼の報われない無念に応える*1ためにも、もうちっと『夢』を頑張ってみよう、と思います。
とまぁ勝手に色々ほざきましたが。
依代智行先生のご冥福を心から祈り、〆の文章とさせていただきます。
どうか、安らかに。
ありがとうございました。

追記。

依代さんの死がアンチブログの追い詰めによる自殺ではないかという噂がネット上であるそうで。
まあ憶測ごときに色々意見するのもアレですが、確かにこの管理人の方のアンチっぷりには、いささか異常なものを感じます。
けれど、いつの世もこんな人はいるでしょうし。
それに、私自身もブログで好き勝手なことばかりほざいてる身ですし、同じ穴のムジナかな、とも思いました。

*1:お前ごときが、何勝手に応えてんだよって感じですが、まぁそう思い込むのは自由じゃないですか