面白い、感動した。それが何になるって言うんですか? リバイバル

1000の小説とバックベアード

1000の小説とバックベアード

片説家。それは、依頼者のために好みの物語を提供する請負作家。
その片説家である木原は27歳の誕生日を迎えた日、とある女性から「小説家」としての仕事を依頼される。
わけのわからないまま書き始めた木原だったが、自分が文字を書けなくなっている事に気づく。
小説家と片説家、「やみ」の抗争。そして発動する謎の計画「1000の小説」。
やがて彼に介入してくる「日本文学」「バックベアード」とは何者なのか……。


第20回三島由紀夫賞を受賞した作品。Gen9がこれを手に入れた当初は、まだ受賞はしておらず、それからやけにあちこちの書店で増刷され始めたので、バスを何度も乗り継いでハシゴしてようやく発見した自分はなんだかすごく損をした気分だがさておき。
率直に言って、佐藤友哉の小説家としての核が出ているというか、それをそのまま具現化したような小説。私小説と文学小説とエンターティメント小説を足して三乗にしたような小説。鏡家サーガ、子供たち怒る怒る怒るとまた違う雰囲気の小説。
小説をネタにするといういわばメタ的な小説ではあるけど、エンターティメント小説としても面白く、テンポが速いのですいすい読むことが出来た。ケータイ小説やタレント小説のヒットが目立つ昨今の出版状況の中、小説というものを概念から問い直すというのもまた面白いのではないかと。
ちなみに「灰色のダイエットコカコーラ」は佐藤友哉人間としての核を具現化した小説(とGen9は分析している)ので、こちらも合わせて読むとユヤタンにかなり近くなれること請け合い。